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保田栄妙 の投稿された作品が3件見つかりました。
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徒花3
聡子と呼ばれたその女性は歳の頃は20歳、藍色の紬に腰まで伸びた黒髪に薄桃色のリボンという、いかにも良家の息女といった格好をしている。この女性こそ神条侯爵の一人娘の神条聡子(かみじょうさとこ)である。聡子は恥ずかしそうに口を開けると。「そろそろお昼の時間でしょ、ですから林太郎さんと一緒にお食事しようと思って。」そんな事を言ってきた。 「・・・・・はい?」林太郎は呆気にとられて聞き返した。「・・・・
保田栄妙 [3,933] -
徒花2
まさか神条家の庭に忍びこむ命知らずがいるとは思わないが、庭に流れる優しい空気を乱す輩は許すわけにはいかんな。林太郎は手元にあった鎌を握ると気配の主に飛びかかった。 「なっ!」そこにはいるはずのない人がいた、このままではまずいとは思ったが、いかんせ飛び出した勢いは止められず、せめて鎌の刃先を反らさねば、と刃を内側に向けたが刹那。「キャッ!」 林太郎は見事にその声の主を押し倒し
保田栄妙 [4,099] -
徒花
叶わないとわかっても想わずにはいられない。届かぬとわかっていても手を伸ばさずにはいられない。そうそれが禁断の果実だとしても。ーーーーーーーーーーーーーー時は大正、日本が大国へと変化を遂げようと躍起になっているというのに、ここだけはほかと違っていた。ゆったりと流れる小川、美しく咲いた桜の花、聞いているだけで心が表れるような山鳥のさえずり、桃源郷と言うに等しいそこは帝都・東京の郊外にたたずむ神条侯爵
保田栄妙 [5,389]
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