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ぺぺんたの投稿された作品が138件見つかりました。
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さよならは五分前 29
ザザ ザザザザ 「簓!」いきなり大声で呼ばれた簓はシャツがまだはだけているにも関わらずリビングに飛び込んできた。 「ど…何?」ただならない海斗の表情に怯えた眼差しを返す。 その簓の耳にも「音」は聞こえた。 「何…この音」ザザザザ… ザザ ラジオのノイズのような、不快な音。 小さな、耳を澄ませてやっと聞こえる程度の音だ。 どこか不安を煽る不気味な音。 「わから
にゃんこ [1,052] -
さよならは五分前 28
あれからどれくらい時は過ぎていったんだろう。 海斗は当たり前のように隣で眠る簓の髪をそっと撫で微笑んだ。 あの日から、ゆっくりと…俺たちは変わってしまった 触れあわない日はない。 体を重ねるより、簓を抱き締めて感じる重さを味わうことに意味がある。 子供みたいな安らいでいる簓の頬にキスをする。 体感的にはあの時から2ヶ月以上は経っているが実際にはもうどれだけ時間が経ったかを深く考えるのはやめにしてい
にゃんこ [1,122] -
さよならは五分前 27
ちゃんと抱き締めあって、ちゃんと見つめ合った。 全ての行為が必然で、胸の高鳴りも吐息も微笑も不可欠だった。 ひとつになるということは…きっと気持ちが相手のなかへと流れ込んで溶け合っていくことかもしれない。 簓の呼吸と海斗の呼吸とが混じりあって体温も境目がなくて。 時折、身体を離して見つめると怖くなるくらい優しい目とかち合う。 簓は目を逸らした。 誰からも必要とされなかったこれまでの人生が変わってし
にゃんこ [1,397] -
さよならは五分前 26
だから…。 その言葉は宙に浮き、二人の間を漂った。 首筋を優しく撫でていた指に力が僅かにこもり引き寄せられていく。 優しい目だ、と間近に見つめながら簓は思った。 端正と言ってもいい顔なのに、どこかユーモアが漂う唇と瞳がもしかしたら外見を損なっているのかも。 でも、完璧な顔より、好きだ。 引き寄せられていく…その目に映る自分自身が見える 取り立てて特徴のない、個性のない、どうってことない自分なのに
ゆーこ [1,189] -
さよならは五分前 25
部屋に入り、ぎこちなくしか動かせない足をソファーで休めた。海斗は簓を見つめ、その視線に気付き困惑しているような表情をさらに眺めた。キスしたい、と思っていた「まだ…許したわけじゃないんだ」「わかってる」簓は僅かに苛立った様子で隣に腰かけた。 「…心配、した?」「ああ」なんだよ、余裕みたいな顔してさ。 簓が黙ってると、不意に海斗はくるりと向き合った。 「なんで泣いた?」その目が余りにも真剣だから、簓
ゆーこ [1,098] -
さよならは五分前 24
文字通り足は棒になり、頑なにこれ以上動くのを拒んだ。 海斗は引きずるように歩いて… アパートの前に戻った時、そのドアの横にうずくまる簓を見つけた。 「…簓」声に顔をあげ、驚いたような顔をしてみせた簓を 海斗はいま出来る精一杯の力で抱き締めた。 座り込んだ形で、触れるのも怖いように抱き締めた。 疲れてて、幻を見てる気さえする。 が、伝わる手応えは本物で鼻先をくすぐる髪も、やっぱり本物で。 「簓」額
ゆーこ [1,307] -
さよならは五分前 23
叩きつけられたドアを、しばらく見つめて、海斗は外へ飛び出した。 一人にさせておけない!!俺はバカだ! どこだ? どこにいるんだ! 物音ひとつしない世界で、道路に佇んで…あのコンビニへ駆け込むも誰もいない なんで泣いたんだ、簓。振り向いた顔は傷ついていた。 わからないことばかりだ、なんで泣くんだ。 「簓!!」大声で叫んで、とにかく走って、捜し回った。 考えてみれば広い世界で、向こうに会う気がなけれ
ゆーこ [1,164] -
さよならは五分前 22
「簓」顔をあげない。 映らないテレビを見ている 「おい」簓は微動だにしない。 海斗は苛立ちが爪先からジリジリと上がっていくのを感じていた。 「こっちみろ」細い肩。白い肌。 この世界でより痛々しいその身体。 それを汚したのが自分だと気づいて痺れるような罪悪感が心を切り裂いた。「ごめん」青白い顔には表情がない。ただ、ゆっくりした動作ではじめて海斗を視線に据えた。それだけで喜びが沸き上がった。 それと
ゆーこ [1,172] -
さよならは五分前 21
「…一生口を聞かないつもりかな?」海斗はコンビニの弁当を食べながら、リビングのソファーに腰かけている簓に声をかける。 あれから、体感的には多分5日…それ以上は経つ。 相変わらず暗闇。 相変わらず時は動かない。 そして簓はあれっきり一言も口を聞かない。 まあ、無理ないか。 レイプに近いからな。 …いや、レイプか。 だが、不思議なのは簓が出ていかないことだ。この世界に俺たちしかいないのなら、家なんて
ゆーこ [1,332] -
さよならは五分前 20
海斗の荒い動きに、悲鳴もでない。 簓はうつろな頭で否定していた。 この状況の全てを。 こんなの現実なわけ…ないよ…。 でも苦痛の向こうに垣間見える快楽の波が、自意識を飛ばしていく。 嫌だ、こんな…。 「簓…」掠れた矢倉の声を背中に聞き、憎いと同時に刺すような痛みが襲う。 …それと、快感が。 挿入される度、痺れるような気持ち良さで頭がおかしくなりそう。 女みたいな、情けない声は本当に自分のもの?
ゆふこ [1,325]