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ボーイズラブの官能小説に含まれる記事が1120件見つかりました。
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さよならは五分前 31
地面は揺れ、ぱっくりと穴を開けた。 二人は抱き締めあったまま底へ底へと墜ちていく。 不思議の国のアリスのようにまっすぐに。 墜ちているにも関わらず、その感覚は全くない。 宇宙空間で浮いているようだ。 このまま死ぬのか? それとも今度はひたすら落ち続けるのか? 海斗はしっかりと簓を抱いたまま、目を閉じた。 なんにせよ、二人一緒だ。 死ぬにしても。 「海斗」ノイズが収まった無音の世界で簓の声が鼓膜を震
にゃんこ [1,214] -
さよならは五分前 30
外に飛び出した二人は道路の真ん中に立ち、顔を見合わせた。 「海斗、温度が…」「ああ」ここにきてから一定だった温度が変わっていた。 「寒い…」簓の震える肩を抱き寄せ、耳障りな音を振り払うように首を振った。 「どうなってんの?」ガチガチと歯を鳴らしながら簓は青ざめていた。 「上着とってくる」二人は取ってきたジャケットに身を包み、それでも寒さに白い息を吐きながら佇んでいた。「怖いよ…」ザザ…ザザザ…
にゃんこ [1,241] -
さよならは五分前 29
ザザ ザザザザ 「簓!」いきなり大声で呼ばれた簓はシャツがまだはだけているにも関わらずリビングに飛び込んできた。 「ど…何?」ただならない海斗の表情に怯えた眼差しを返す。 その簓の耳にも「音」は聞こえた。 「何…この音」ザザザザ… ザザ ラジオのノイズのような、不快な音。 小さな、耳を澄ませてやっと聞こえる程度の音だ。 どこか不安を煽る不気味な音。 「わから
にゃんこ [1,052] -
さよならは五分前 28
あれからどれくらい時は過ぎていったんだろう。 海斗は当たり前のように隣で眠る簓の髪をそっと撫で微笑んだ。 あの日から、ゆっくりと…俺たちは変わってしまった 触れあわない日はない。 体を重ねるより、簓を抱き締めて感じる重さを味わうことに意味がある。 子供みたいな安らいでいる簓の頬にキスをする。 体感的にはあの時から2ヶ月以上は経っているが実際にはもうどれだけ時間が経ったかを深く考えるのはやめにしてい
にゃんこ [1,123] -
さよならは五分前 27
ちゃんと抱き締めあって、ちゃんと見つめ合った。 全ての行為が必然で、胸の高鳴りも吐息も微笑も不可欠だった。 ひとつになるということは…きっと気持ちが相手のなかへと流れ込んで溶け合っていくことかもしれない。 簓の呼吸と海斗の呼吸とが混じりあって体温も境目がなくて。 時折、身体を離して見つめると怖くなるくらい優しい目とかち合う。 簓は目を逸らした。 誰からも必要とされなかったこれまでの人生が変わってし
にゃんこ [1,397] -
扉の向こう側 17
『何を今更!!』呆れる二人に抗議する。『だって!紗矢サンの正体を知る前に店長が戻ってきて―』“兄貴”だの“紗矢”だのもめはじめたからさぁ。『そうだね。有クンの言う通りだ。俺は周藤紗矢。周藤弘希の“実の"弟、ね!』“実の”って…解ってますって。『もういいだろ。何でお前が居るんだ、紗矢!!』『そりゃ兄貴が可愛い子を連れてくるって聞いたら〜俺も弟として立ち会わなきゃイカンなぁと…♪』飄々とした態度で今
日和 [1,063] -
扉の向こう側 16
完全に頭に血がのぼってるらしい店長と“紗矢(さや)"と呼ばれた黒髪の男。睨み合う二人に戸惑う。板挟み、だ。今にも黒髪に掴み掛かりそうで…こんな店長みたことないよな?“蛇に睨まれた蛙”だけどこっちの蛙(黒髪)は蛇に怯えてなんかない。むしろ余裕たっぷり。にんまりと蛇(店長)に微笑する。『…まあまあ。立ち話もなんだしそこ座れば?』余裕な蛙が蛇を誘う 笑二人掛けのテーブルの、そこ…?不思議に思っていると
日和 [1,117] -
さよならは五分前 26
だから…。 その言葉は宙に浮き、二人の間を漂った。 首筋を優しく撫でていた指に力が僅かにこもり引き寄せられていく。 優しい目だ、と間近に見つめながら簓は思った。 端正と言ってもいい顔なのに、どこかユーモアが漂う唇と瞳がもしかしたら外見を損なっているのかも。 でも、完璧な顔より、好きだ。 引き寄せられていく…その目に映る自分自身が見える 取り立てて特徴のない、個性のない、どうってことない自分なのに
ゆーこ [1,189] -
さよならは五分前 25
部屋に入り、ぎこちなくしか動かせない足をソファーで休めた。海斗は簓を見つめ、その視線に気付き困惑しているような表情をさらに眺めた。キスしたい、と思っていた「まだ…許したわけじゃないんだ」「わかってる」簓は僅かに苛立った様子で隣に腰かけた。 「…心配、した?」「ああ」なんだよ、余裕みたいな顔してさ。 簓が黙ってると、不意に海斗はくるりと向き合った。 「なんで泣いた?」その目が余りにも真剣だから、簓
ゆーこ [1,098] -
さよならは五分前 24
文字通り足は棒になり、頑なにこれ以上動くのを拒んだ。 海斗は引きずるように歩いて… アパートの前に戻った時、そのドアの横にうずくまる簓を見つけた。 「…簓」声に顔をあげ、驚いたような顔をしてみせた簓を 海斗はいま出来る精一杯の力で抱き締めた。 座り込んだ形で、触れるのも怖いように抱き締めた。 疲れてて、幻を見てる気さえする。 が、伝わる手応えは本物で鼻先をくすぐる髪も、やっぱり本物で。 「簓」額
ゆーこ [1,307]