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柵なんて錆び付かせて。2

[2336]  吉乃森 雪  2006-04-30投稿

冬月さんは“冬月 砂雪(ふゆつき さゆき)”という名前。
凄く綺麗な名前で、始めて冬月さんと逢ったのは私が本当に小さい頃だったけど、いまでも覚えている。
長くて、褐色にオレンジがかった綺麗な髪を、後ろで一つに束ねていた。喋りかたは、関西弁で幼いときは『へんなのー…』て呟いてた。そしたら冬月さんは決まっていつも微笑んでくれたから。


約束した。“此処”から出してくれる、と。
でも、冬月さんは私の傍にはもういない。



親方様は私をほしいと言った。
私の両親は親方様の会社でお世話になっていて、そして私を親方様渡せば企画の契約を承諾してくれると。
幼い頃から性道具としてしか扱われなかった私。

そんな私に、掃除屋の冬月さんは優しく傍にいてくれた。
『どないしたん?そんなとこで泣いて…』
『可愛い顔が台無しや』
『おいで?』
『大きくなったら、俺が此処連れだしたるから』
『それまでの辛抱や』





………冬月さんは、掃除屋の仕事をやめた。
それは屋敷へ足を踏み入れなくなったというけと。
そしてそれは冬月さんが望んだ結果だということ。

『オマエは私の傍で鳴けばいい。』

そう何度も体に叩きこまれた。

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