月夜の晩に 16
俺は、破裂しそうな心臓をおさえつけるのに必死で…もう必死で必死で必死で。
目眩、動悸、呼吸困難。
だれか助けて、と言いたいくらいの緊張。
同じ漢字を持つ優しい奴の助言に従って、俺はここまで来てしまった。
ああ。
俺のいつもの壁がない。
心細くて仕方ない。
あああ。
ベルに手が触れる。
笑っちゃうくらい震える指じっとり手の内がしめっている。
ああ。
俺は、本当に…。
先輩に出逢うまで本当に 「人と接する」ことをしてこなかったんだな。
俺は…。
扉の向こう側で、ガタンッと大きな音がして、俺は文字通り跳ね上がった。
え、ま、待って。
ちょっと…。
考える余裕もなく、扉は容赦なく開いて…。
先輩。
俺たちはお互い、騙されたみたいな顔して突っ立っていた。
ああ。
こんなの、どうしたらいいんですか…。
誰か、教えて…。
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