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それぞれの明日 13

[1451]  にゃんこ  2010-07-31投稿
こんなキスは、前にしたことがある。
俺から悠に、警告のキス。
同じ味がするなあ…愛情のない冷たい味。

「ってえ!」

俺は思い切り唇を噛んでやった。男の口端に滲む赤い液体。
俺の唇にも。
舐めると鉄の味がする。
「俺にキスしちゃうなんて脅しのつもり?兄さん」

「倉田。倉田圭。いや、ふざけただけ」

違うね。
あれは宣戦布告だ。

「まあいいや。あんまり付きまとうとケーサツ呼んじゃうよ…ね、圭さん」

「…またな、嘉納アキヒトくん」

また、か。
まあいいや。どうせ退屈してんだ。
新しいゲーム始めるのも悪くないな。


それから、奴はしばしば俺の病室を訪れるようになった。
観察するような目と、相反する人懐こい笑顔。
悠の不審げな顔にも怯まないし、俺の親にも
「高校のボランティア活動で知り合いまして」
なんて嘘ついてやがる。
俺は今のところ黙ってた。これはゲームだ。
面白いとこまで引っ張らないとな?

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