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予感 1

[9233]  輪廻  2010-09-19投稿


美紀は戸惑った気持ちのまま、
指定されたホテルの一室で男を待っていた。


1年前からメールだけのやり取りで過ごしていた相手と、ついに対面することになったのだ。
顔はおろか、年齢、職業もお互いに分からない。
美紀自身も、既婚者である事は告げていない。


結婚して3年、まだまだ外見も内面も若い美紀を、美紀の夫は気に入っていた。

度が過ぎた愛妻家の夫は、
美紀を家庭に閉じ込め、
育児すらさせたくないらしく、
避妊を徹底していた。


男と逢う理由は単に言ってしまえば、
欲求不満だからである。


しかし、美紀からすれば、何かの間違いで妊娠しても構わないという覚悟でいた。


(このまま夫に従っていたら、いつまでも子供が……)


その時、ドアをノックする音がした。


「!……は、はい」


美紀は、余所行きの黒いワンピースをひらひら揺らしながら、ドアに向かった。

開けるとそこには、若い男性が立っていた。

「美紀…さん?」

「はい、そうです」

「思っていたよりずっとお若いです」

美紀の方も、思っていたより相手は若かった。
お世辞でも美紀の頬は紅く染まった。

「入ってください」

静かにドアを閉めると、美紀はもう一度相手の男性をまじまじと見た。

「功一郎(コウイチロウ)さん…?」

「はい、名前からしてもっとおじさんだと思いましたよね?」

「…え、ええ」

「19です」

「やだ…一回り違う」

「本当に?全然見えません。大学生くらいに見えるな…」

話している間に功一郎の手が、美紀の背後にまわり、ドアの鍵をかけた。

「大学生だなんて…化粧のせいです」

「そうなんですか?」

功一郎は美紀の顔を見つめた。

美紀はたまらず目を逸らし、
ベッドに座った。

「リラックスしましょう?お互い、メールの時みたいに」

「そうですよね、ごめんなさい。あんまり若い方だったから…急に緊張してしまって…」

美紀は功一郎が淹れてくれた冷たい珈琲を、両手に包んで、膝の上においた。
カップの中を眺めると、不安そうな顔をした自分が映っていた。

「珈琲。お嫌いですか?」

「あ、いいえ。そんなこと…」

「美紀さん…リラックスしてください」

功一郎は、美紀の手からカップを取り上げ、テーブルに置いた。

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