妄、想なんです 11
「来たね」
立ち入り禁止を示すロープの前に小早川…はいた。
僕はあれ以来「さん」づけで考えられない。
どう考えていいかわからないでいる。
キンモクセイの甘い香りが空気に溶け込んでいる。
夕闇を背にした青松館は寒々しく映り、僕は多少ぞっとした。
明らかに人気はなく…明らかにそれを意図して誘われたのだ。
いつもの可愛い小早川なんかじゃなく、黒猫が僕を見返している。
薄い茶の瞳が夕空のもとではまるで金色。
服は黒一色で上品なピーコートを着ている。
学校の「理央」でないことは一目瞭然だ。
うすら笑いが張り付いていて、僕は目を逸らした。
鼠になったような気がする
鋭い爪の餌食にされる直前の。
「何か用?」
「用があるから呼んだんだろ?行こう、英士」
馴れ馴れしい呼び方だが、口調は全く馴れ合ってはいない。
僕はしばし対峙しながら、唾を飲み込んだ。
いざとなれば、小柄な小早川より僕に分がある。
頷いて踏み出した。
真横に並んだとき、小早川は僕の腕に自らの腕を絡めた。
「ここから先はさ…君の妄想だよ」
「妄想?」
繰り返す僕を見上げた。
「そう…」
立ち入り禁止を示すロープの前に小早川…はいた。
僕はあれ以来「さん」づけで考えられない。
どう考えていいかわからないでいる。
キンモクセイの甘い香りが空気に溶け込んでいる。
夕闇を背にした青松館は寒々しく映り、僕は多少ぞっとした。
明らかに人気はなく…明らかにそれを意図して誘われたのだ。
いつもの可愛い小早川なんかじゃなく、黒猫が僕を見返している。
薄い茶の瞳が夕空のもとではまるで金色。
服は黒一色で上品なピーコートを着ている。
学校の「理央」でないことは一目瞭然だ。
うすら笑いが張り付いていて、僕は目を逸らした。
鼠になったような気がする
鋭い爪の餌食にされる直前の。
「何か用?」
「用があるから呼んだんだろ?行こう、英士」
馴れ馴れしい呼び方だが、口調は全く馴れ合ってはいない。
僕はしばし対峙しながら、唾を飲み込んだ。
いざとなれば、小柄な小早川より僕に分がある。
頷いて踏み出した。
真横に並んだとき、小早川は僕の腕に自らの腕を絡めた。
「ここから先はさ…君の妄想だよ」
「妄想?」
繰り返す僕を見上げた。
「そう…」
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