予感 30
翌朝は昨日とうって変わって、冷え込んでいた。
美紀は寒さにうっすら目を開け、
隣にいる功一郎に寄り添った。
守たちの出張先も同様だった。
先に起きた守は、成美にもう一枚ブランケットをかけてやった。
成美は無防備な寝顔で、
少し微笑んだように見えた。
しばらくして服を着ていると、どこにあったのかバスローブを着た成美が起きてきた。
「おはようございます…。風邪引くかと思いました」
「おはようございます。本当ですね。大丈夫ですか?」
「はい………今日は昨日よりもっと急いで、あさってには終わらせましょう!」
「やる気ですね、頼もしいなぁ。朝食は下のレストランでどうですか?」
「いいですね!」
こちらに来る前の2人とはまるで違う信頼関係が築かれていた。
少数精鋭の守たちの会社では、ほとんどの社員が顔見知りだが、勿論ここまで深く関わり合うことはない。
「美味しい、朝からホットケーキなんて贅沢」
「作ったりしないんですか?」
「料理は軽いものしか…それにお菓子とかこういうものは作ったことがなくて…」
「今度試しに作って下さいよ」
「はい!是非……」
その瞬間2人は、はっとして、
気まずい沈黙が流れた。
―今度、は無いのだ。
こんな甘いひと時は、来ないのだ―\r
成美の食事の手が止まった。
「無神経でした…すみません」
守は謝った。
「ほ…ホントに!無神経……です…よ」
またしばらく沈黙が流れた。
成美は顔を伏せた。
ぽたぽたと雫が成美の伏せた顔からこぼれた。
「成美……」
「ごめん…なさい……急に…あなたと…会えなくなるって…思ったら…」
栄転する自らの身では、かけてやる言葉も無かった。
ついて来いという言葉を口にする資格もなければ、口にする意味も無かった。
お互いに既婚者。
出会った時から決まっていた事だった。
美紀は寒さにうっすら目を開け、
隣にいる功一郎に寄り添った。
守たちの出張先も同様だった。
先に起きた守は、成美にもう一枚ブランケットをかけてやった。
成美は無防備な寝顔で、
少し微笑んだように見えた。
しばらくして服を着ていると、どこにあったのかバスローブを着た成美が起きてきた。
「おはようございます…。風邪引くかと思いました」
「おはようございます。本当ですね。大丈夫ですか?」
「はい………今日は昨日よりもっと急いで、あさってには終わらせましょう!」
「やる気ですね、頼もしいなぁ。朝食は下のレストランでどうですか?」
「いいですね!」
こちらに来る前の2人とはまるで違う信頼関係が築かれていた。
少数精鋭の守たちの会社では、ほとんどの社員が顔見知りだが、勿論ここまで深く関わり合うことはない。
「美味しい、朝からホットケーキなんて贅沢」
「作ったりしないんですか?」
「料理は軽いものしか…それにお菓子とかこういうものは作ったことがなくて…」
「今度試しに作って下さいよ」
「はい!是非……」
その瞬間2人は、はっとして、
気まずい沈黙が流れた。
―今度、は無いのだ。
こんな甘いひと時は、来ないのだ―\r
成美の食事の手が止まった。
「無神経でした…すみません」
守は謝った。
「ほ…ホントに!無神経……です…よ」
またしばらく沈黙が流れた。
成美は顔を伏せた。
ぽたぽたと雫が成美の伏せた顔からこぼれた。
「成美……」
「ごめん…なさい……急に…あなたと…会えなくなるって…思ったら…」
栄転する自らの身では、かけてやる言葉も無かった。
ついて来いという言葉を口にする資格もなければ、口にする意味も無かった。
お互いに既婚者。
出会った時から決まっていた事だった。
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