紺碧の空に星 3
母さんは何事もなかったかのように僕に接した。
はじめから「春臣」など存在しなかったように。
そのうち近所の噂話に耐えられなくなったから、引っ越しをすることにした。
でも本当は、春臣の痕跡を消し去る為だ。
あの人達にとって、子供は僕だけなんだろう。
引っ越しをするときに、春臣の部屋を片付けてながら鍵のかかった戸棚を僕は、とりつかれた様に懸命に工具でこじ開けていた。
気になっていた。
昔から。
そして…。
…ああ。
見なければ…。
良かったのに。
僕は、それらを広げた中心で泣いた。
中には、春臣と両親の笑顔の写真が数枚。
そして赤ちゃんの僕が五歳の春臣に抱かれ眠る写真が一枚。
幼い僕が春臣に宛てた手紙が一枚。
そして、綺麗に畳まれた手紙が一枚。
手紙は、綺麗な筆跡で書かれていた。
遺書だ。
僕と同じ位、それ以上に死にたいと望んでいる姿があった。
写真はどれもクシャクシャで、半分以上破られた跡のある物もあった。
けど、僕と春臣の写真だけは綺麗で…。
裏には春臣の字で
おれのおとうと!
だいすき!
と書いてあった。
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