セタンスクレ2
『お前はもっと周りをよく見ろ』
原島にそう言われた。
どういう意味か聞くとそのまんまの意味、と言われた。
意味わからん。
周りを見て。で?ってゆう話。
最終電車ギリギリで焦ってダッシュして転んだ原島と別れ
俺は自宅へ向かおうと歩き出した。
(電車通勤って惨めだな)なんて原島を憐れみながら。
明日は楽しい休日なのに
心無しか憂鬱。
なんて勿体ない。
今まで散々怒られてきても反省してこなかった自分を見放されてから後ろめたくなるなんて。
「俺本当にガキだなぁ」
終電も去って、もう誰もいないし
ため息混じりに吐き捨てた言葉にまさか返事が返ってくるなんて思いもしなかった。
しかもそれはタイミングを見計らったかのように。
「やっと気付いたかクズ」
「…え?」
声がした方に目をやると俺をにらんでるあの恐ろしい顔が近くに…!
…
…いない。
辺りを見回しても。
やはり誰もいない…
「…鬼の声…幻聴?」
とたん後悔する。
俺は自分の目線でモノを見ていたので気付かなかったのだ。
すぐ近く。ふいに振り返り下へ目をやると電柱越しにうずくまって俺を睨んでいる黒川さんがいた。
それはもうすごい目付きで。
ゾク。 何かが俺の中で鳴る。
「く…ろかわ、さん…」
「だぁれが鬼だテメぇ。」
やべぇ。超怒ってる何か。
「えっと…スンマセン…。」
てかそんな所にうずくまって何してんだろ。
かなり疑問なんだけど、なんて思ってると所長は
"チッ"と舌打ちをして俺に手招きしてきた。
「まぁいい、ちょっとお前、来い。」
そう言われ渋々近寄る。
殴られんのかな…
「起こせ。」
……
はい?
思わず間抜けな声が出た。
「だから…起こせって。」
「何でですか?」
「いいから!!」
怒鳴りながら頼りなく手を出してくるもんだから俺は慌ててその手を掴んで起こそうとした。
この人、さっき俺にクズとか言ってなかったっけ?
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