さよならは五分前 10
入りますよ、と声をかけ、靴を脱ぎあがる。
普通なら絶対しない行為。見つかれば警察沙汰。
それこそ二人が望むところだ。
海斗は無意識に、簓を自分引き寄せ、自分の背後に位置づけた。
二人の息づかいしか聞こえない…明かりは玄関を抜けた向こう側でおそらくリビングか?
海斗はそっと、扉を引いた
「…どういうことだ」
誰もいない。
だがリビングのテーブルには瓶ビールと酒の肴らしき刺身を入れた小鉢。
つきっぱなしのテレビが、明滅している。
人の気配溢れる部屋。
金気臭い味が口中に広がる…恐怖の味。
もう言い訳もなにもできない。
海斗は怖かった。
簓を振り返り、虚ろな目が時計を見つめている…10時10分。
わかっていた。
そう
止まっているんだ。
俺たちの時間が。
それとも…。
ぶるっと背中を震わせ、簓の氷のように冷たい手を握った。
「行こう」
「どこへ?」
返事を期待していなかったから、海斗はしばし簓を見据えた。
「…俺のアパート」
反論も了解もない。
二人は無言でこの薄気味の悪い光景を後にした。
普通なら絶対しない行為。見つかれば警察沙汰。
それこそ二人が望むところだ。
海斗は無意識に、簓を自分引き寄せ、自分の背後に位置づけた。
二人の息づかいしか聞こえない…明かりは玄関を抜けた向こう側でおそらくリビングか?
海斗はそっと、扉を引いた
「…どういうことだ」
誰もいない。
だがリビングのテーブルには瓶ビールと酒の肴らしき刺身を入れた小鉢。
つきっぱなしのテレビが、明滅している。
人の気配溢れる部屋。
金気臭い味が口中に広がる…恐怖の味。
もう言い訳もなにもできない。
海斗は怖かった。
簓を振り返り、虚ろな目が時計を見つめている…10時10分。
わかっていた。
そう
止まっているんだ。
俺たちの時間が。
それとも…。
ぶるっと背中を震わせ、簓の氷のように冷たい手を握った。
「行こう」
「どこへ?」
返事を期待していなかったから、海斗はしばし簓を見据えた。
「…俺のアパート」
反論も了解もない。
二人は無言でこの薄気味の悪い光景を後にした。
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