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さよならは五分前 13

[1220]  にゃんこ  2010-11-26投稿
しんとした空気。

雨は帰ってこない。
月明かりもなく…
寝息も…ない。

背中合わせに寝ながら、どうにか思考を止めようと瞼を閉じていた時、「起きてますか…?」と小さな呟きが聞こえた。

「ああ」

海斗はため息まじりに答えた。

「寝れないんです。疲れてるのに」

「同じだよ」

簓が身じろぎし、こちらがわを向いたのが気配でわかった。

背中に感じる、彼の視線。
「静かすぎるな」

「…ええ」

俺も振り返ろうか…。

海斗は苦笑した。
何を迷う?
男なんだぞ、相手は。
しかも出会ったばかりの。
「俺も1人暮らしで…俺が消えたって誰も心配なんかしないかもしれない」

哀切を帯びた口調に、思わず寝返りをうち、正面へ向き合った。

「勉強もそこそこで、ごく普通な大学生なんです。
惜しむような人間じゃないから…時間を大切にしていなかったから…捕まったんでしょうか?
これは罰なんですか…?」
「簓」

それは衝動的だった。

反射的とも言える。

両手で守るように、彼を腕の中に収めていた。

堪らなく怖かった。
2人はお互いにしがみついて肌の奥の温もりを感じていたかった。

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