さよならは五分前 33
雨だ…。
雨が…降ってる。
矢倉海斗はコンビニの椅子に座り、そこから外を伺っていた。
そうだ。
迷っていたんだ、傘を買うか買うまいか。
家は近いんだ、我慢してもいい。
時計を見ると10時5分。
なんだろう。
なぜ俺は、こんなに。
気持ちが落ち着かない、まるで何かを置いたままわすれているみたいだ。
気分を落ち着かせる為に、やはり傘を買うことにした
たかが五百円じゃないか、契約も決めてきたんだ、ケチケチすんな。
傘を店員に手渡され、なぜか何度も何度も時計を見る
時計は
10時10分だった。
海斗は店員が唖然とする勢いで雨のふる外へ飛び出した。掴んでいた傘を開きもせず。
店をでた瞬間、車が一台通りすぎていった。
その車を見送り、全身を濡らしたまま、海斗はビニール傘を見下ろしていた。
10時15分。
失ってしまった。
どこからこんな感情がわくのかわからない。
わからないが…。
胸の痛みは激しくて、息が出来ないほどだ。
目から溢れているのは涙。
誰なんだ?
なぜ、俺の心の奥に、知らない誰かの両目があるんだ
なぜ目を閉じると浮かぶんだ?
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