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さよならは五分前 33

[837] にゃんこ 2011-01-26投稿

雨だ…。


雨が…降ってる。

矢倉海斗はコンビニの椅子に座り、そこから外を伺っていた。

そうだ。
迷っていたんだ、傘を買うか買うまいか。

家は近いんだ、我慢してもいい。

時計を見ると10時5分。

なんだろう。

なぜ俺は、こんなに。


気持ちが落ち着かない、まるで何かを置いたままわすれているみたいだ。

気分を落ち着かせる為に、やはり傘を買うことにした
たかが五百円じゃないか、契約も決めてきたんだ、ケチケチすんな。

傘を店員に手渡され、なぜか何度も何度も時計を見る
時計は

10時10分だった。

海斗は店員が唖然とする勢いで雨のふる外へ飛び出した。掴んでいた傘を開きもせず。

店をでた瞬間、車が一台通りすぎていった。


その車を見送り、全身を濡らしたまま、海斗はビニール傘を見下ろしていた。

10時15分。

失ってしまった。

どこからこんな感情がわくのかわからない。
わからないが…。

胸の痛みは激しくて、息が出来ないほどだ。

目から溢れているのは涙。

誰なんだ?

なぜ、俺の心の奥に、知らない誰かの両目があるんだ
なぜ目を閉じると浮かぶんだ?

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