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さよならは五分前 最終回

[1068] にゃんこ 〜予想だにしない長さ…反省ですww読んで下さった皆様、ありがとうございました! 2011-01-27投稿
頬に流れる雨と涙。

俺は何を失ったんだっけ?
手に持った傘。

まるで何かの存在に後押しされたように急に買ったこの傘。

いまは必要ないどころか、忌まわしいものにさえ見える…だが、なぜ?

目を閉じると、強い光を持った誰かの目。

どうしてそんなふうに俺を見つめるんだ?

頭が割れそうに痛い。

海斗は両腕で頭を抱えた。
吐きそうだ。

フラッシュする、ないはずの思い出。

柔らかな頬にかかる髪…涙のあと…喪失のあとの喜び…誰との?

誰との思い出…?

誰、あれは誰?

神様、教えてくれ。



顔を覆った両手の隙間に、スニーカーが見えた。

顔をあげると、少年…大学生くらいの男の子が立っていた。


二人は何も言わずに立ち尽くした。



海斗は震える指で、彼の頬に触れた。


「変わった名前だったね」
少年は海斗から傘を受け取り、アスファルトを引っ掻くように一文字を書いた。
二人は微笑んで、それから抱き合った。


さよならは出会いの五分前


出会いはさよならのあとに
二人の時計は動き始めて、空には太陽みたいな月が光を放つ。

きっと、ずっと。

ずっと。

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