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ラック・ガール #43

[1637] 輪廻 2011-03-03投稿
自動販売機で飲み物を買った蹴人は、
彼女役をリルナに頼んだ公園に来ていた。
リルナはブランコに座っていた。


「……!!!」

蹴人は缶ジュースをリルナの頬にくっつけた。

「ショックで声が出るかと思ったけど、ダメか…。…………風邪……なんだろ?」

リルナの瞳が切なく潤んでいるのが分かった。

「本当は…違うのか?」

俯いたまま答えを濁すリルナに、
蹴人は立ったまま優しく語り出した。

「………親父が、藍原のこと…知ってるかもしれないって…。
どういう意味かは分からないし、
今までだって、藍原のこと…
俺も知らなかった……。

今は、それが凄く嫌なんだよ。
俺に出来ることが……無さすぎる」

リルナは静かに涙をこぼした。

「お前の声が出ないワケも、
今、泣いている本当のワケも……。
俺は知りたい」

「…………………」

静寂に包まれた公園には、次第に落陽が射し込まなくなってきていた。

不意にリルナは立っている蹴人に飛び付いた。

もし声が出たとしても、何も言えなかっただろうとリルナは思った。

「…………」

「…………」

蹴人は力強く、リルナの小さな震える体を、抱き締めた。

「……………」

「…………好きだ…」

応えることも、答えることも、
今のリルナにはできなかった。




「落ち着いたら、ウチに来てくれないか?
父親に会って欲しい。
多分、藍原に…………、
リルナにとって大切なことを、
親父が知ってる…。
それがなにか、なんで親父が知ってるのかも俺は知らない。
でも、知りたいんだ。
大切な人のことだから…。
……頼む」


リルナは力強く優しい蹴人の腕のなかで、
ずっと泣いていたかった。

しかし、もう目を背けることができない”なにか”と、向き合う時が来たのかもしれない。

「………………!」

涙を拭い、
リルナは頷いた。

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