クレイジーキャット 11
「連理」
ゆっくりと歩幅をゆるめて歩く連理。
普段と変わらない様子を装っているのだとしたら失敗だ。
身体中が緊張している。
「アイツなんだろ…連理の…好きだった家庭教師」
「…」
黙ってる。
それは答えだ。
俺は妙に苛立ち…さらにアイツが嫌いになった。
完璧な大人。
あまりにも俺と違う人種。
生まれながらの勝ち組気質が全身から漂う男。
だから、嫌いなわけじゃない。
気づいたよ。
嫉妬だね。
連理にこんな顔させた奴に対しての嫉妬。
「まだ好きなわけ」
口をついてでる、つまらない言葉。
答えは欲しくない癖に。
「…琉聖」
「なに?」
連理は蒼白な顔で、俺の頬を撫でた。
「今日、ごめんな」
傷つけるつもりはなかったんだ、と耳元で囁いてそっとキス。
不意に、俺はしがみついて離れそうになる唇を引き寄せた。
人目もどうでもいい。
「聞いたよな、お前」
俺は怒ったように口走った
「静留より今はお前が好きだ」
連理は驚いて俺を凝視した
「マジで?」
俺は俺自身にずっと問うてきた疑問に答えを出した。
「…マジで」
連理が、笑った。
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