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メテオリック・ボーイ 3

[3207] 輪廻 2011-06-14投稿
髪の毛から雨の滴が落ちるのも気にせず、
わたしは沈黙を守っていた。


男子生徒とわたしは、似ているのではない。
ほとんど『同じ』だった。
姿形がではなくて、
恐らくこの学校に於ける境遇が…。

きっと、苛立つわたしに気を遣って、
なにも訊かないでいてくれているのだろう。
タオルを頭に被ったまま、うなだれている。


「………訊かないんだ?わたしがあんなところに倒れていた理由」

男子生徒は驚いたようにこちらを向いた。


「あっ…。うん、気にはなったけど、どうやって訊いたらいいか分からなくて」

同い年には見えない。
体操着の胸の部分に、『1』と書いてあるから一年生であることは確かだ。
苗字は、濡れていたり、漢字が複雑なため、読み取れない。

「同じクラスの男子たちに、いたずらされてたの……。詳しくは話したくない。
それで……もう何回もこんな目にあってて…。
もう……家にも、教室にも戻りたくなくなっちゃって……」

話していて情けなくなってきた。
わたしがこんな事を、この同級生に打ち明けたところで、何が変わるわけでもない。

下手に正義感の強い子だったら、巻き込まれ兼ねない。
そんな淡い期待を抱きたくなるくらい、
彼の眼差しは真剣に、真っ直ぐわたしを捉えていた。


「あのまま……朝まで誰にも見つからなかったら………もう……死」
「死んじゃうとこだったじゃないか!」

「……………え…」

「あのまま朝までいたら、死んじゃうとこだった!!
要するにその男子たちが、キミを殺しかけていたとこだったのか!」

「………ううん。そんなことはされてない……。されてないよ…」

「じゃあなんでキミはあそこに倒れたままだったの。
そいつらから、キミが動かなくなるまで、酷いことされてたんだろ!」

「…!違うっ…!そういうんじゃ…!
体は動くの…!体はっ……!ぅうッ………」

「体が…体が動いても、
キミの心が動かなくなるまで、
酷いことされてたんだろ!!」

安っぽい、『心』という言葉を、
わたしはこの時、

生まれて初めて、

ちゃんと聴いた気がした。

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