夜鷹の床(31)
「んんんんんっ!」
上半身は紫乃に、下半身は与兵衛に攻め立てられ、狂おしいまでに乱れる。根元まですっかり呑み込まれてしまった与兵衛は上体を起こし、二人をまとめて抱き竦めた。二人ともに小柄なためか、いとも簡単にその腕に納まってしまう。
「あぁ……」
お理津は震える唇から幸せそうな声を洩らした。暗闇の中では、もはや誰が誰だか判らないほどの混沌。交じり合う三人。時を忘れ、朝が近づくのにも気付かずに絡み合い続けた。
雨戸の隙間から白い光が射し込む頃、三人は一様に夢の中。常世から隔たれた部屋の温度は暖かい。そんな中で最初に目を覚ましたのは与兵衛であった。間接光にぼんやりと浮かび上がる肉体。みな裸のまま、重なり合ったまま。与兵衛は二人を起こさないよう、ゆっくりと腕を引き抜いた。
「……はてさて」
あれほどまでに激しい一夜を過ごしたにも関わらず、この朝の威勢。彼は自らの股間に呆れる思いであった。
「俺は好き者だったのか」
武士たる者、己を律するべしと考えて来たが、身体は正直である。斜陽に浮かび上がる稜線は光る産毛で、息遣いに合わせるように上下している。与兵衛は這いつくばって手を伸ばし、そっと触れ、温もりを確かめた。お理津の腰が弧を描く向こう、起伏の少ない稜線は少年と見紛うばかりの紫乃の体。何も無い部屋よりはいい、と、ささやかな満足感に浸りつつもこんな蜜月、長く続くはずもない。とも思う。与兵衛は着流しを羽織り帯を締め、仕上がった傘を纏める。そして二人を起こさぬよう部屋を出て行った。
※つづく
上半身は紫乃に、下半身は与兵衛に攻め立てられ、狂おしいまでに乱れる。根元まですっかり呑み込まれてしまった与兵衛は上体を起こし、二人をまとめて抱き竦めた。二人ともに小柄なためか、いとも簡単にその腕に納まってしまう。
「あぁ……」
お理津は震える唇から幸せそうな声を洩らした。暗闇の中では、もはや誰が誰だか判らないほどの混沌。交じり合う三人。時を忘れ、朝が近づくのにも気付かずに絡み合い続けた。
雨戸の隙間から白い光が射し込む頃、三人は一様に夢の中。常世から隔たれた部屋の温度は暖かい。そんな中で最初に目を覚ましたのは与兵衛であった。間接光にぼんやりと浮かび上がる肉体。みな裸のまま、重なり合ったまま。与兵衛は二人を起こさないよう、ゆっくりと腕を引き抜いた。
「……はてさて」
あれほどまでに激しい一夜を過ごしたにも関わらず、この朝の威勢。彼は自らの股間に呆れる思いであった。
「俺は好き者だったのか」
武士たる者、己を律するべしと考えて来たが、身体は正直である。斜陽に浮かび上がる稜線は光る産毛で、息遣いに合わせるように上下している。与兵衛は這いつくばって手を伸ばし、そっと触れ、温もりを確かめた。お理津の腰が弧を描く向こう、起伏の少ない稜線は少年と見紛うばかりの紫乃の体。何も無い部屋よりはいい、と、ささやかな満足感に浸りつつもこんな蜜月、長く続くはずもない。とも思う。与兵衛は着流しを羽織り帯を締め、仕上がった傘を纏める。そして二人を起こさぬよう部屋を出て行った。
※つづく
感想
感想はありません。