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彼女の望んだ解答 Q2

[2887] 輪廻 2012-07-17投稿
「あれ……」

恭太はちらっと雪美に目を向けると、
彼女の額から、汗が珠のように滲んでいるのが分かった。

「もしかして……先生も暑い?」

「…………。私語は慎みなさい」

雪美は恭太をじっと見つめたまま、
表情は崩さなかった。
むしろ、固定されたまま崩せない様にも見える。
それほどまでに、不自然な仏頂面に、恭太はついつい口を開きたくなった。

「先生って……学生時代、滅茶苦茶モテたでしょ?」

「守岩恭太…。補習要項をさらに…」

「ああ〜〜ごめんなさいごめんなさい!!今、やります!やりますから!」

息を吐く声と同時に、雪美は恭太から視線を外し、黒板を見やった。

つい考えるのは、今しがた彼に問われた学生時代の自分。


――水下雪美、数学はいつも通り満点だな。

水下さんて、本当に綺麗で、羨ましい。

水下って、彼氏とかいるの?

水下さん、あの超難関大学受けるんでしょ?

きっともう、将来設計とか自分で完璧出来ちゃってんだろうな〜。

水下さんて、あの大学に結婚決めた彼氏さんがいるんでしょ?

だから必死であんなに勉強してんのか。

私たち一般人には分からない世界だよね。

きっと俺らなんか馬鹿に見えてんだろ。

相手にもされねーよな、俺らなんかよ。

水下……心の中で馬鹿にしやがって……。

水下さん………羨ましい………。

水下さん………………


雪美は…俺には勿体ないよ……きっと―――


「…!!先生!先生!おい!!できましたって!!」

「!!!」

雪美はいつの間にか眠ってしまっていた。

もう外は夕暮れ、空は赤く染まっていた。

「…ごめんなさい。補習、お疲れ様でした」

「先生……寝言…言ってたんだけど…」

かあっと雪美の顔が紅くなる。
しかし恭太は茶化すつもりではなかった。

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