彼女の望んだ解答 Q22
「はい、席について。…みんな、朝会でも聞いた通り、水下雪美先生が夏休みの見回りの最中に、何者かに刺されました」
「犯人は分かってないんですか!?」
「なんで刺されたんですか!?」
「みんな落ち着いて!いいから、話を聞きなさい!水下先生はどうにか一命は取留めましたが、重体には変わりありません。ですから以後の数学の授業は…………」
恭太は話を半分も聞かず、ぼんやりと外を眺めていた。
「夜の九時だぞ……。何時間見回りしてんだよ……」
恭太は半ば怒りながら、彼女の携帯番号に電話をかける。
出たのは、聞き覚えのない、焦った様子の男性の声。
――もしもし!?
この携帯電話の持ち主の女性の、
お知り合いの方ですか!?
救急隊の者ですが…!!
落ち着いて聞いてください!
「え…?」
いたずらであってくれと、
手術室から雪美が出てくるまで、
ずっと俺だけが騙されているんだと、
ずっと俺は質の悪いいたずらをされているんだと、
願っていた。
手術室から出てきた雪美は、蒼白な顔をして眠っていた。
「雪美………雪美…!」
「安静に…!患者さんは安静にさせてください!」
雪美は、二日間目覚めなかった。
その間に、芋づる式に俺と雪美の関係は他の教師たちに、ばれた。
状況が状況だけに、俺は責められず、一旦不問となった。
雪美は、三日目の朝に、ゆっくりと目覚めた。
「…!雪美、分かるか…?」
「…………………恭太…」
「雪美!今、先生呼ぶからな…」
「先生は…………私…だよ?」
「!…馬鹿野郎…!!」
恭太が何故涙を流しているのか、雪美は直ぐには理解できなかった。
それから、
自らの身に起きたこと。
恭太との関係が発覚したこと。
目が覚めるまで、恭太が身の回りの世話をして、つきっきりでいてくれたことを、
雪美は知った。
「…………………ごめん…なさい」
「本当に……もう……絶対、嫌だからな」
――ああ、そう言えば、
見回りに出る前…何かとてもくだらないことで悩んでいた気がする……。
「恭太…手、握って……?」
――こんな簡単に、答えが得られたのに…。
言葉も何も要らない。
ただ、手を握ってもらうだけで…。
簡単に…。
「ね……恭太……」
「………?」
雪美は、彼の厚い手に頬擦りして、その途端に込み上げた熱いものを、我慢しきれなくなった。
「私………生きてて……良かった!!……もう…!!恭太に会えないんじゃないかって…!!恭太の声…聞けないんじゃないかって…!!本当に怖くて…!!!怖かった…!怖かったよ……!!!」
「………うん……俺も…怖かった」
個室の病室に、雪美の泣き声がしばらく響いていた。
「犯人は分かってないんですか!?」
「なんで刺されたんですか!?」
「みんな落ち着いて!いいから、話を聞きなさい!水下先生はどうにか一命は取留めましたが、重体には変わりありません。ですから以後の数学の授業は…………」
恭太は話を半分も聞かず、ぼんやりと外を眺めていた。
「夜の九時だぞ……。何時間見回りしてんだよ……」
恭太は半ば怒りながら、彼女の携帯番号に電話をかける。
出たのは、聞き覚えのない、焦った様子の男性の声。
――もしもし!?
この携帯電話の持ち主の女性の、
お知り合いの方ですか!?
救急隊の者ですが…!!
落ち着いて聞いてください!
「え…?」
いたずらであってくれと、
手術室から雪美が出てくるまで、
ずっと俺だけが騙されているんだと、
ずっと俺は質の悪いいたずらをされているんだと、
願っていた。
手術室から出てきた雪美は、蒼白な顔をして眠っていた。
「雪美………雪美…!」
「安静に…!患者さんは安静にさせてください!」
雪美は、二日間目覚めなかった。
その間に、芋づる式に俺と雪美の関係は他の教師たちに、ばれた。
状況が状況だけに、俺は責められず、一旦不問となった。
雪美は、三日目の朝に、ゆっくりと目覚めた。
「…!雪美、分かるか…?」
「…………………恭太…」
「雪美!今、先生呼ぶからな…」
「先生は…………私…だよ?」
「!…馬鹿野郎…!!」
恭太が何故涙を流しているのか、雪美は直ぐには理解できなかった。
それから、
自らの身に起きたこと。
恭太との関係が発覚したこと。
目が覚めるまで、恭太が身の回りの世話をして、つきっきりでいてくれたことを、
雪美は知った。
「…………………ごめん…なさい」
「本当に……もう……絶対、嫌だからな」
――ああ、そう言えば、
見回りに出る前…何かとてもくだらないことで悩んでいた気がする……。
「恭太…手、握って……?」
――こんな簡単に、答えが得られたのに…。
言葉も何も要らない。
ただ、手を握ってもらうだけで…。
簡単に…。
「ね……恭太……」
「………?」
雪美は、彼の厚い手に頬擦りして、その途端に込み上げた熱いものを、我慢しきれなくなった。
「私………生きてて……良かった!!……もう…!!恭太に会えないんじゃないかって…!!恭太の声…聞けないんじゃないかって…!!本当に怖くて…!!!怖かった…!怖かったよ……!!!」
「………うん……俺も…怖かった」
個室の病室に、雪美の泣き声がしばらく響いていた。
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