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the angel make love 5

[2123] 輪廻 2012-08-10投稿


「よォ」

「!ぅわぁあ!!」

翌朝花子が目覚めると、
貴斗は目の前で覗き込んでいた。


「?……!…な、何ですか…!?」

「雨、降ってんぞ、どんより曇り空でな」

貴斗はくいっと親指で窓を指した。

「は…い…
…知ってましたよ…」

「あと二日だな」

「まぁ…太陽がなければ儀式はできませんからね」

貴斗は舌打ちして、窓際の椅子に乱暴に腰掛けた。

花子はコーヒーメーカーの様なものから、透明な液体を、透明なカップに注いだ。

「はい…」

恐る恐る花子はそれを貴斗に差し出した。

「…?なんだこれ」

「マウリっていう、天界の樹に成る木の実から抽出した飲み物です。
目が覚めて頭が回りますよ」

「てめ…舐めてんのか!!
………………
……美味い」

「……。
…あなたは…ずっとそうやって、
人を脅すような口調や態度をとってきたんですか…?」

「……ッ」

「貴斗さん…」

「花子、昨日言ったよな。あの世にきてまでつまんねーモン見せんじゃねーよって。あの世にきてまで説教される筋合いなんざねーよ」

「………私は、やっぱり…あなたを殺して良かったのかもしれません」

貴斗は初めて目を見開き、
花子に掴みかかった。
花子は初めて貴斗に動揺せず、
彼の眼差しを見つめ返した。

「遠い未来は私にも分かりませんが、
あなたはそのままなら、いつかきっと…
…誰かに憎まれ、恨まれて、殺される運命になっていたでしょう」

「ハッ…!じゃあ、お誂え向きじゃねェか!!
誰かに殺されるくらいなら、
一気に事故で死んだ方がよっぽど…」

花子は室内に響くくらい強く音をたてて、貴斗をひっぱたいた。


「いい加減にしなさい……!」


「…ッ」

「あなたは死んだんですよ!?

全然悲しくないんですか!?

遺してきた誰かに申し訳ないとか…
…そういう人間らしいこと…
…少しも思わないんですか?」



それだけ言うと、花子は今度は貴斗を抱き締めずにはいられなかった。

彼が何の抵抗もせず、虚ろな表情で、静かに涙を流し始めたからだ。


――ああ……。
思わないんじゃない、

思えないんだ。

『そう』素直に思える人が、
彼にはいなかった…。

いなかったから…悲しくないんだ…

悲しめない……そんなの…一番哀しい…――

「貴斗さん…。
あなたを地獄には行かせませんから…!!」

「……………っせェな………」

抱き合う二人のすぐ向こう、
窓の外の雨は勢いを増すばかりだった。

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