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転校生 4話

[1633] 小ガニ 2014-10-30投稿
大池をのぞむ外周の草むらは、虫の鳴き声でやかましい。
季節がら仕方ないが、時おり顔にバッタが当たってきさえした。

それでもジョギングは心地よい。
久しぶりの走り出しのおっくうさも、全身の血液がめぐるにつれ、爽快な気分に転じてくる。

時おり散歩中の老夫婦とすれちがう他は、誰もいない、灯りさえまばらな中をひたすらペースを保ち走った。

ふと、遠巻きに自転車のライトが揺れているのが見えてきた。
ようよう近づくにつれて、瞬間、自分の名前を呼ばれた事に気づいた時は、心底ぎょっとした。

「広山くん!」

ケイコだった。
驚いたような大きな目をこちらを向けながら、彼女は自転車をゆっくりと降りた。

「…夜、走ってるんだ。健康にいいね」
その瞳に不思議な光をたたえながら、ケイコは僕を見据えた。

「あ、ああ。まぁな。よかったら、ちょっと歩こうか」

自分でもよくわからない程、胸が高鳴っていた。

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