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愛語 2

[574] カスパール 2015-05-01投稿
 一方のリディアは何処までも澄んだ青空をそのまま抽出したかの様な蒼い瞳に見事なハチミツ色のロングヘアー、そして水を弾く程張りのある乳白色の肌を持った、愛らしい麗人であったのだが彼女は元の姓を”カンツォーネ”と言い、曾ては”イタリーノ”と言う国の東側、山岳地帯で暮らしていた民族の末裔であったが彼女達の一族もまた感性が鋭い上に機転も利き、特に呪術や魔法に秀でた血筋であったがそれのみならず、弓道や合気等の、所謂”護身術”をも身に付けていた。

 また個人差はあるモノの、基本的には男は全員働き者でしっかりしており、女性達も精神性が高くて自分を信じて受け入れてくれた人間には何処までも一途に尽くす性質であったが彼女はその中でも実力も心根も兼ね備えている、強くて優しい女の子であったのだ。

 その”カンツォーネ・ハーズィ(家、一族)”は何代か前に此処、アルケイルへと移住して来たのであるがこの周囲は予てより知る人ぞ知るパワースポットであると共に風光明媚な景勝地であり、数百年に渡って人々の信仰や注目を集めて来た土地であった。

 その象徴とも言えるサーリアス山脈の中腹部からは傷や病を癒すとされる清らかな沸き水が”メリアス”と呼ばれる幾つかの泉を形作り、そしてそれは下へと流れ出してこの辺りの豊穣な大地を始めとして人々や動植物等の全ての生きとし生ける者達の喉を潤して来ていたのである。

 カンツォーネはその支流の近くにある、小高い丘の上に巨大でしっかりとした作りの旅籠兼自宅を構え、その宿泊稼業と川を利用した水運と生業に代々富を築き上げ、今やアルケイルの街の顔役、名士と呼ばれる迄になっていたのだ。

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