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美雪とセシリア 31

[1315] 御法屋 金帯 2015-05-12投稿
 そんな先達の頭痛などどこ吹く風、全く動じていない織香であったがしかし、そんな彼女には”苦学生”と言うもう一つの顔があった。

 両親は研究者で5年程前から海外の研究所に赴任しておりその為七つ歳上の姉、透香が母親変わりに妹を育てて来たのであるが、短期で怒りっぽいモノの意思はしっかりしており、また自身の悪い所は悪い、と認める素直さをも有していた彼女は子供の頃から空手を習っており、有段者であると同時にかなりの実力者でもあったのだ。

 そんな透香は大学を出て直ぐに大手通販サイトを運営している会社に就職をし、最初のうちは大したトラブルも無く、楽しい日々を送っていたのであるが半年程過ぎた頃、上司と社員の争いに巻き込まれて退社を余儀無くされたのである。

 この会社は単なるインターネット注文のみならず、幾つか持っていた自身の子会社に新商品開発を”事実上”命じていたのであるが、新しく出来た商品がそこそこ売れる、と言う目算が立った場合は確かに”自社開発した新商品”として大々的な販促が行われる。

 ただしこれには条件があり、”万が一、何かあったり外れた場合は親会社は一切責任を持たず”、加えて”損失補填及び信用回復の為に、商品を自分達である程度買い取る事を誓約しろ”との条項が記載された契約書を書かされるのだ(勿論、万一の場合はそれを履行しなくてはならない)。

 確かにネット注文やダウンロード販売を取り扱う企業でしかも、ある程度有名な場所ならば多少は自社商品の買い取り等は仕方が無いにせよ、此処は余りにもあからさまに過ぎていて、この時も中々買い取りが進まない事に業を煮やし、その子会社にちょいちょい圧力を掛け始めたのだ。

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