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アブノーマル1~出会い~

[479] ぱんちょ 2021-01-26投稿
 25歳になる誠治はとある地方都市の市役所に勤務している。
大学を卒業して、この市役所の正職員となり、3年目。
昨年まではこれと言ってトラブルもなく、ほとんど毎日定時で仕事を終えていたが、今年になって状況は一転。
国が今までに類を見ない不況に陥り、国からの給付金の申請やら、生活保護の申請などで、最近は市民が連日たくさん押し寄せている。
職員は庁舎内での案内や応対に追われて、ひどく疲れている状態。
誠治も同じで、毎日平和に終わってくれる事を願っていた。
しかし、ある日事件は起きた。
 この日も来庁者が多く、待ち時間が長い状態で、一人のボディービル体型のガタイのいい中年の男がイライラしていた。
「いつまで待たせるんだ!」
そう言いながら、持っていた煙草に火をつけた。
周りの人達は怪訝な表情をしながらも、厄介な相手に関わりたくないと何も言わず、黙っていた。
すると、隣に座っていた中年の女性が、
「ここは禁煙なので、煙草はやめてもらえませんか?」
「はあ、お前!俺に指図するのか?吸いたい時に吸って、何が悪い?」
男はそう言うと、女性の顔に煙草の煙を吐き出した。
女性は蒸せながら、
「やめて下さい!」
そう言って、立ち上がるとふらふらして、男の足を踏んでしまった。
「いてえ!足踏みやがったな?お前!何すんだ?」
男はそう言うと、女性を突き飛ばした。
「きゃああ!」
女性は吹っ飛び、持っていた鞄も飛んで、中の物が床にぶちまけられた。
男が近づいて、
「いいざまだ!俺にたてつくから、こうなるんだ!おとなしくしていればいいんだよ!」
女性は恐怖のあまり、体を震わせていた。
その時に1人の若い職員が動いた。
「やめて下さい!」
「警察?俺は悪くないぞ。その女が俺の足を踏んだのが悪いんだ!お前、職員のくせに市民に指図するのか?俺達の税金で食ってるくせに。それにお前みたいな正義面した奴は嫌いなんだよ!」
男がそう言うと、男の拳が若い職員めがけて…
あんな男に殴られたら…?
誰もがそう思った。
しかし、若い職員は男の拳を避けて、勢い余った男の拳は壁に衝突。
「いてえええ!」
男が悲鳴を上げた。
どうやら、指を骨折したらしい。
男は駆けつけた警備員によって身柄を拘束され、連れて行かれた。
誰もが安堵した。
女性はまだ怯えながら、鞄に入っていた物を拾い始めた。
「お怪我はありませんか?」
女性に若い職員が声をかけた。
「だ、大丈夫…です。」
「手伝います。」
「すみません…」
女性と若い職員は鞄の中の物を拾い、最後の一つを女性が拾おうとした時、女性の手に若い職員の手が重なった。
若い職員の手は大きく、指が少し動いた。
女性は身体が少し火照ったような感じになった。
まるで、指を愛撫されたような…
二人の目が合った。
短髪の若い職員は精悍な顔立ちで、なかなかの男前で、魅力的だった。
「すみません…」
若い職員がそう言って、手を避けると、女性は怯えた表情はなくなっていて、
「いえ、こちらこそ、すみません…ありがとうございました。助かりました。」
と返事をした。
少し落ち着いたらしい。
「警察に被害届は出されますか?」
「いいえ、本当に大丈夫ですから…私は用事を済ませたら、帰りますので…」
「分かりました。」
「本当にありがとうございました。」
「それでは、お気をつけて、お帰り下さい。」
二人のやりとりが終わり、若い職員はその場を離れていった。
女性は若い職員が去っていった後も興奮が覚めなかった。
あんな魅力的な若い男に手をさわられて見つめられて…
まるで、初恋にも似たような少女のような気分になって、自分の番号を呼ばれてもなかなか気づかなかった。
隣に座っている人が女性の持っている番号札を見て、
「呼ばれてますよ。」
と大きな声で言ったので、女性は我に帰り、
「すみません…ありがとうございます。」
そう言って、窓口に向かっていった。
あの出来事の後だから、仕方がない。
呼ばれてますよと言ってくれた人も、窓口の職員もそう思っていた。
まさか、女性があんな目に合いながら、若い職員に恋心を抱いているなんて…
気づく者は誰もいなかった。
女性の危機を救ったのは、もちろん誠治。
誠治もまた中年の女性に淡い恋心を抱いていた。
女性の面影が似ていた…
初体験の相手であり、今までで最も愛した女に…
 翌日、昨日中年の男に絡まれた女性が市役所を訪れた。
女性は市役所の駐車場で誠治を見つけると、
「こんにちは。昨日はありがとうございました。」
「あっ、昨日の…こんにちは。お体はお変わりありませんか?」
「ええ、おかげさまで。これ、よかったら、食べて下さい。」
女性はそう言うと、小さなビニール袋に入った物を差し出した。
「嬉しいな…ありがとうございます。」
「甘いものはお好きですか?」
「はい、大好きです。」
「よかった…」
「わざわざ、すみません。」
「いえ、昨日助けていただかなかったら、どうなっていたかと思うと…少しで、すみませんが…」
「いいえ、後で、いただきます。」
「それでは、私は用事がありますので、失礼します。」
「ありがとうございます。」
女性が駐車場に止めてある車に乗り、車が動き出して、見えなくなった。
誠治は車が見えなくなるまで、女性を見送り、駐車場に立っていた。
女性は車に乗って、バックミラーを見ると、じっと立ったまま車を見送っている誠治が映っていた。
まるで、別れを名残惜しむかのように見送っていた…
あの若者としたい…あの指の動き…よかった…きっと、上手なのだろう…
でも、私みたいなおばさんじゃね…未来ある若者のこれからの人生を壊すことはできないし、たとえ愛し合っても、若者にとっては遊び…
そうなって、傷つく…
女性は複雑な気持ちで、車を走らせた。
誠治は昼休みになると、市役所の近くにある公園に行き、一人で昼食を食べた。
最後に女性にもらった物を取り出すと、それはおはぎだった。
大きなおはぎが三個入っていて、手作りだと感じた。
そのうちの一個をほおばると、
「うまい…うまいな…」
そして、女性を思い出して、
「また…会えるかな…会いたいな…」
そう呟いていた。

















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