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同級生3

[5473]  るる  2006-08-03投稿
彼女の何か訴えてくるような瞳に僕はドキドキした。
子供じゃあるまいし、女性に見つめられて何ドキドキしてんだとは思うのだが、彼女が言った゛忘れられない人゛って、まさか僕 !?
僕のそんな心を見透かしたように彼女は笑って言った。
「今更だけどね、本当は私、井坂君のことが好きだったのよ」
やっぱり…
「でもね、当時はみんなクラスメイト、仲間って意識の方が強かったでしょ ? 何となく告白するとそんな関係がぎくしゃくしちゃうような気がして、とうとう言えなかった」
そういえば、僕らはみんなそんな感じだったっけ。好きとか嫌いとかそういうのじゃなく、みんな仲良しの仲間って感じだったっけ。
「卒業してからは甘い恋心、忘れて仕事に励もうって何度も思ったわ。でもね、忘れようと思えば思うほど忘れられなくなって、そのうち井坂君にいつか会えたら昔の淡い思いを伝えたい、そんな気持ちが大きくなってね」
そんなに思ってくれてたんだ…
「…井坂君、私のこと綺麗になったって言ってくれたでしょ ?」
「えっ、うん」
「私が綺麗に見えるのなら、それは井坂君のおかげよ。井坂君に対する思いが私をそう見せたのね。嬉しかった」
彼女は本当に嬉しそうに笑った。
僕は思わず生唾を飲み込む。
僕に向けられたその笑顔がすごく色っぽく見えて、まるで誘っているかのようで…。
僕も彼女を見つめ返すと彼女は小さな声で言った。
「…井坂君、彼女がいるんでしょ」
「えっ!? あ、うん。でもなんで知って…」
「実はね、一週間ほど前に偶然町で見かけたの。一緒に歩いていた彼女、と手も嬉しそうだった」
「…うん」
そう、僕には彼女がいる。
退屈な毎日の中の一つの小さな楽しみ。
僕はその彼女が好きであることは間違いなかった。
「…こんなお願い、その彼女に悪いとは思うの。でも私、忘れられないの…」
彼女が何を言ってくるのかその時はっきりとわかった。
「一夜だけでいいの。あなたとの思い出がほしいの。そして忘れさせて…」

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