泣くもんか 1
ごめん。
ごめんね。
広はさっきからそれしか言わない。
「なんで、何でかって聞いてんだよっ!!」
手元にあった教科書を投げつける。
それは広をかすめて壁に当たり、床に落ちてぐしゃっと潰れた。
「…ごめん」
私は唇をかんだ。
諦めろ、と声がした。
理由は何にしろ、広が私を振ったという事実は変わらないのだ。
「本当にごめん」
彼はうつむいたまま目をあわせようとしない。
そんな空々しい文句は聞きたくない。
口では何だって言える。心にもないことを、本当の気持ちのように見せかけることも出来る。
私は重い口を開いた。
「あのバカ女とヨリ戻したって、はっきり言ってよね」
はっとして顔を上げる気配がする。
無視して言葉を続ける。
「もういいよ、ちょうど飽きてきたとこだし」
足が震えた。
それを隠すため、意地悪くにっこり笑う。
「別れよう」
泣くもんか。
泣いてやるもんか。
こんな、こんな男のために──
あの時、泣けたらどんなに楽だったろう。
でも私は堪えた。
一度泣いてしまうと、私が抱えこんでいるどす黒いマグマのような感情が息せき切ってどっと流れ出し、止まらなくなってしまうのではないかと思ったから。
それは命取りだった。
いつかきっと越えられる。
ああ、そんなこともあったねと笑って言える日が来るだろう。
わずか15歳の私は、自分が受けたショックの大きさを、見ないようにすることでしか和らげる方法を知らなかったのだった。
ごめんね。
広はさっきからそれしか言わない。
「なんで、何でかって聞いてんだよっ!!」
手元にあった教科書を投げつける。
それは広をかすめて壁に当たり、床に落ちてぐしゃっと潰れた。
「…ごめん」
私は唇をかんだ。
諦めろ、と声がした。
理由は何にしろ、広が私を振ったという事実は変わらないのだ。
「本当にごめん」
彼はうつむいたまま目をあわせようとしない。
そんな空々しい文句は聞きたくない。
口では何だって言える。心にもないことを、本当の気持ちのように見せかけることも出来る。
私は重い口を開いた。
「あのバカ女とヨリ戻したって、はっきり言ってよね」
はっとして顔を上げる気配がする。
無視して言葉を続ける。
「もういいよ、ちょうど飽きてきたとこだし」
足が震えた。
それを隠すため、意地悪くにっこり笑う。
「別れよう」
泣くもんか。
泣いてやるもんか。
こんな、こんな男のために──
あの時、泣けたらどんなに楽だったろう。
でも私は堪えた。
一度泣いてしまうと、私が抱えこんでいるどす黒いマグマのような感情が息せき切ってどっと流れ出し、止まらなくなってしまうのではないかと思ったから。
それは命取りだった。
いつかきっと越えられる。
ああ、そんなこともあったねと笑って言える日が来るだろう。
わずか15歳の私は、自分が受けたショックの大きさを、見ないようにすることでしか和らげる方法を知らなかったのだった。
感想
感想はありません。