少女・伊織 13
「資格がない?」
武瑠は戸惑いを隠せずにいた。伊織が俺に憧れていた?
まさか…本当に?
「お義兄さまは伊織に優しくしてくれたでしょ?お義兄さまは忘れていても…伊織はこの家でお義兄さまだけが拠り所だったの…でも…」
武瑠は魅せられたようにキラキラと零れ続ける涙を見つめていた。
優しかった?俺が?
そんな記憶はない…いや、一度まだ小学生だった伊織に時計をやったことがあった…壊れた金の時計。
ほんの気紛れだったのだが…。
「伊織、お前…あの時計の時のことを…」
伊織は直ぐ様、頷く。
(もう少しよ、伊織!)
「大事にしまっているわ…。でも…駄目なの」
「伊織…」
武瑠はたまらずに手錠を外していった。
いたいけな義妹にしてしまったことを後悔しながら。
まだ二十歳という若さが武瑠の弱点だった。
世間を知ったような態度でいても結局はまだ純粋な部分があったのだ。
手足の枷を解かれた伊織は呆然と立ち尽くす武瑠の胸に飛び込んだ。
「お義兄さま…私、お義父さまに…全てを奪われてしまったの」
武瑠は稲妻に打たれたような衝撃を受けた。
親父が?
まさか…いやでもあの異常なまでの愛着は…。
冷たい、けれど抱き締めずにはおれない細い身体…この素晴らしい肉体を親父が…。
親父ならやりかねない。
武瑠は猛烈な嫉妬と妬ましさに苛まれた。
しかも伊織は俺に恋をしていたのだ!
伊織の処女は俺のものだったかもしれない…。
「伊織…俺は間違っていた。こんな事をしてどうかしてたんだ」
伊織は首をふる。
「さっきはまたお義父さまが来たのかと思って抵抗してしまったけれど…私、お義兄さまになら…穢れてしまった伊織なんかお義兄さまは嫌?」
甘い視線、柔らかな感触に赤い唇。鼻孔をくすぐる淡いシャンプーの香り…。
武瑠は伊織を強く抱き締めると唇を奪い囁いた。
「お前を抱きたい…」
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