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潤沢な愛‐4

[3220]  ピューマ  2009-05-14投稿
外の雨は勢いを取り戻していた。

少女は自分のこれからよりも少年と過ごせる今に浸っていたかった。

少女は独り言のようにつぶやいた。

「ずっとこうしてたい」

少年も応えて、つぶやいた。

「そうだね」

ギターを丁寧にしまうと、
少年は温かいココアを淹れてくれた。

「苦いのは嫌いなんだ。君は?」

「私も」

二人は不思議な感覚に陥った。

まるで今までこうしていたように、
お互いの名前も年齢も、
何もかもを聞かないまま打ち解けた。

「僕も驚いてるんだ、このアパートには。大家さんはほとんど留守。住んでるのは僕だけなんだ」

「大きな住処ね」

「でも僕はここでこうして、ギターを弾き続けていたい。君も一緒に」

「私なんて、邪魔になる」

少年はマグカップを包む少女の両手を包んだ。

「あったかい」

二人の声が重なった。

「君は一人じゃないよ、少なくとも今は」

少女はまたしても零れ出した涙を、伏せて隠した。

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