鬼畜なアイツ 16
リョウが復活したのはそれから2日後。
俺は黙って看病していた…リイチはやっぱり、普通だった。
曖昧な時間が過ぎる。
春は終わって夏が近づいてくる。
学ランが白シャツに変わる…。
リイチは俺を桜、とは呼ばなくなった。
俺はユウキくん、と呼ばれる度、胸が締め付けられて…苦しい。
こんなんなら、人を好きになんてならなけりゃ良かった。
リョウは時々、キスしてくる。
俺もなんだか、避ける気がしなくて普通に受け止める。
激しい、舌が絡まるようなキスじゃなくていたわるような口づけだから。
リョウは好きだ。
安心するし…一緒にいて心地いいから。
リイチには締め付けられる胸が、リョウといるとホッと暖かくなる。
俺とリョウはどんどん一緒にいる時間が延びる。
リイチと二人きりにはなりたくなかったから。
リイチと二人になると、俺は俺でなくなって…リイチにすがりたくなる。
お願いだから…って叫びたくなる。
俺を好きになって、もう一度かまって。
もう逃げないからって。
でもリイチは俺を見てくれない。
見ても笑うだけ。
冷たい目も…イタズラっぽい言葉もない。
「どうしたの…、ユウキくん」
好きなんだ、リイチ。
声に…ならない…。
「なんでもない」
「そう?…あ、そうそう…リョウはいい奴だから大事にね」
笑って言わないで。
そんなこと聞きたくない
「…うん、わかってる」
リイチはニコっとして俺を見た。
その目が本当に優しくて…柔らかくて。
切なさが襲う。
愛しくて泣きたくなる。
あんな意地悪されたのに
…なんで好きなの?
理由なんてないんだろうな…あの、素直な告白が本当は嘘だったとしても…俺は…。
黙って俯く俺の頬に、リイチの指が触れそうに近づいた。
俺の目と、リイチの視線が絡む。
俺の心臓が高鳴って、リイチは…
「…さ…」
リイチが小さく囁いた瞬間、扉が開いた。
伸ばした指は引っ込んで
言葉の続きは聞けなくなった。
リイチはサッと机に向かい、俺は振り返って開いた扉から顔を出したリョウを見ていた。
…なんだったんだ?
今のは…。
さ…。
そのあと、なんて言うつもりだったの…?
教えてよ、リイチ。
俺はもう気持ちを抑えられないよ。
その夜…俺は静かにベッドから降り…。
リイチがいないのに気づいた。
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