鬼畜なアイツ 17
どこだ…?
月明かりが眩しい。
いつかリョウがリイチを氷で出来た月、と例えたことを思い出す。
リイチ。
好きだ、リイチが。
冷たい目と、優しい目。
意地悪な言葉と、拗ねたような言葉。
リイチ…どこ…?
「……桜?…」
パッと振り向くと、驚いた顔をしたリイチが立っていた。
月明かりの下で、どこか頼りなげなリイチ。
青ざめた顔をして、人形のように立ち尽くしている。
「リイチ」
「馬鹿、なんでいるの」
馬鹿?
なんでだよ。
リイチは大きなため息をついて頭をかいた。
「…ったく…。努力が水の泡。どこまで僕を困らせるの」
「な…困ってんのは俺の方だよ!!リイチのせいで…俺は…」
つかつか、とリイチが近づく。
真っ赤になって言葉がつかえる。
「何?」
「…あ、いや…だから…お、俺は…」
馬鹿、言えよ!
リイチが好きだって…。
「桜、僕は君が好きだ」
…。
…え?
「リョウのことが好きなのは知ってる。でも僕は君が好きだ。
初めて会った時から。
だから…二人がいるのを見れないんだ。
…僕は部屋を代えて貰うつもり。このままじゃ、君を壊したくなる」
な…なに言ってんの?
リイチはホッとため息をついた。
「言わないでいようと思ってたのに…。あんな顔みたら冷静じゃいられなくなるでしょ」
「リイチ…ねえ、俺を好きなの?」
リイチの両目…あれだけ欲していた月の瞳がヒタと据えられ…俺を圧倒する。
「うん…滅茶苦茶にしたい」
「…逃げないよ、俺。…リイチ、滅茶苦茶にしてよ。俺…」
掠れた声が塞がれた。
唇に無理矢理、舌が捩じ込まれる。
リョウの優しさなど微塵もないのに…俺はおかしくなっていく。
もう何もかも 月の光のせいにしよう。
俺は、リイチにしがみついた…。
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