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魔女【23】

[1972]  CORO  2009-07-29投稿
あたしが、シャワーを終えて戻ると、廊下は綺麗に掃除されていた。


「達夫クン…。ごめんね」

あたしが謝る。


「ええって。オレもシャワー浴びて来るわ。千絵は先に寝とき」


あたしはベッドに入って考える。


まさか、そんなこと…。


パパと、二年間関係を続けてきて、一度もそんな兆候はなかった。


なのに、どうして今頃…。


気が付くと、達夫が部屋に戻って来ていた。


ベッドに腰を下ろして、あたしをふりむかせた。

「千絵…」


なあに?

あたしは目で答える。


「あのなぁ…。オレ、父親になってもええよ」


何言ってるんだろう、この人…。


「はあ?意味、わかんないよ」

あたしは答えた。


「お前、赤ん坊いるんやろ?そやから、父親になっても…」


「バカ言わないでよ!妊娠なんてしてないよ!」


あたしは達夫に掴み掛かった。


「妊娠なんかしてないよ。赤ちゃんなんて、いないよぅ!」

達夫はあたしを抱き寄せた。


「千絵…。ちょっと落ち着け」


あたしは、達夫の胸で泣いた。


声を上げて、子供の頃のように。


あたしが泣き止むのを待って、達夫が話し始めた。


「間違いやったら、それでもええ。とにかく、聞いてくれ。
オレ、高校時代に付き合うてた彼女、妊娠さしてな…。
結婚するつもりやったけど、親に許して貰えんで…。
中絶させてしもた…。
マジで好きな女やったから、
辛うて、苦しいて…。
そやから、もしお前が妊娠しとるんやったら…」


「父親になるって?
アハッ!バカみたい。第一、達夫クンの子供じゃないのに…。
昨日、出会ったばかりなのよ。あたしたち」


「かまへん。おれはお前のこと…」


「やめてよ!あたし、あんたなんかイヤ!
もう、ほっといて!」


達夫は、黙ってリビングに行った。


達夫の気持ちは、ありがたかった。

もしこの子が、ほかの人の子供なら、
達夫の気持ちに甘えたかも知れない。


でも、この子は、絶対に産んではならない子…。

パパとの、子供…。

堕ろすしか……、


ないの…。

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