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魔女【32】

[2342]  CORO  2009-08-08投稿
画面の角には、
見覚えのある佐倉の顔。


アナウンサーが、無機質な声で、佐倉の死を報じていた。


佐倉さんが、
死んだ!?


あたしは、画面に釘づけになった。


日曜日の夕方。

佐倉が、京都に出掛けようとしたのを、
妻の雅美が見咎め、痴話喧嘩になった。

逆上した雅美は、包丁で佐倉を刺殺した。



あたしは床にへたりこんだ。

後から後から、涙が溢れてくる。


佐倉さんは、
来てくれるつもりだったんだ…。


佐倉さんを殺したのは、

あたし………。



あたしにさえ、出会わなければ、死なないで、済んだ。



あたし…


やっぱり、悪魔だ。


周りの人が、
みんな不幸になっていく…。




パパ…


パパに逢いたい…



その時、あたしは強烈な腹痛に襲われた。


子宮を捩切られるような痛みで、あたしは床の上を転げ回る。


誰かぁ!

誰か、助けて!


あたしは声の限りに叫ぶ。


助けてぇ!!



あたしの、赤ちゃん!


赤ちゃんが……………。


ドンッ!ドンッ!ドンッ!



激しくドアをノックする音。


それっきり、


あたしの記憶が途絶えた…。



ちえ……………………。



ちえ………。



千絵…。


懐かしい声…。



パパ……。



パパ?


「千絵…」



恐る恐る…

あたしは目を開けた。


目の前には


懐かしいパパの顔があった。


「千絵。もう、心配ないよ」


「パパぁ!!」


覗き込むパパの首に、
あたしはしがみついた。


パパが、しっかりと抱きしめてくれる。


「大丈夫か?」

パパが言う。


「平気。それより、もっと強く、抱っこして!」


パパの腕に、力がこもった。


「千絵!」


「パパ!逢いたかったよう!」


あたしは声を上げて泣いた。


いつまでも、
いつまでも…。


パパの温かい腕の中で…。

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