それでも僕は 3
イキナリ水を引っ掛かけて大笑い。
僕は完全にムカついて、先輩だという事も忘れてホースを取り返し先輩にぶっかけてやった。
「!!オイ、俺は足にかけただけだろ!」
その慌てぶりが可笑しくて笑ってしまう。
「同罪です!イキナリやるんだから」
先輩はゲラゲラ笑いながら水滴のついた髪を払って言った。
「なんだ、お前笑えんだ…普通じゃん」
「え」
僕は絶句した。
それから赤くなった。
子供みたいに水を引っ掛けあって笑った自分が恥ずかしくて。
「この後予定あるか?」
「ありませんケド」
へ〜、じゃ付き合えよ?
と笑ってずぶ濡れのままヨロメク僕を引っ張って行く。
そして屋上に連れていかれた。
「これあげる?」
「こ、これ、酒じゃないですか」
手渡されたのはビール缶だった。
しかも飲みかけ…。
「さっきまでここで飲んでてさ。よく放課後飲んでんの。で、つまんなそ〜なコ見つけて」
…。
先輩はニッコリする。
「そいつ毎日メチャ怖い顔で花に水やってんの。誰もいないのに黙々と。で、なんか…ここで見てたらちょっと、笑顔みたくなったんだよな」
僕は赤面を誤魔化す為に渡された温いビールを一気に飲んだ。
苦い。
「余計なお世話。僕は一人のが楽ですし」
先輩は僕を見つめた。
「お前って前のリイチそっくり(笑)なぁんか、そういうのほっとけないんだよな」
リイチ?
誰。一緒にするな。
そう言いたかったのに…一息に飲んだビールのせいで頭がボウッとしてしまう。
唐突に膝がガクッと折れた。
えっ?
た、立てない(汗)
「おいおい、お前相当弱いな(焦)!
ったく…しゃあないな」
ほら、と屈む先輩。
「いいれす」
呂律さえ回ってない!
「意地張るな。ほら」
…というわけで僕は初対面の先輩におぶさり、寮まで運ばれた。
相部屋の二人は酔った僕を見て顔を見合わせていた…記憶はそこで途切れている。
それからはほとんど毎日先輩は僕のとこに来た。
チョッカイを出しに。
いつの間にか僕は先輩を心待ちにしていた。
来ない時は屋上に行く。
煙草くわえて遠くを見ている先輩を、僕は見つめていたんだろうか?
…そうだ。
いまなら否定しない。
僕は初めて会った時から亮二先輩が好きだったに違いない。
だからこそ、先輩が恋してることに気づいたんだ
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