それでも僕は 6
気づいてしまってから、僕は先輩を見つめるのが怖くなった。
見つめる度に好きになる
胸が痛くなる。
どこか空虚な目で、誰かを探してる先輩。
リイチ先輩と転校生が笑いあいながら…ふざけあいながら、通りすぎるのを見て、目を細める先輩… 。
もう、忘れてよ。
転校生なんか、忘れてよ
僕は叫びそうになる。
時折転校生が複雑な表情を浮かべて先輩を見ると…先輩は瞬時に表情を変えて手を振る。
快活に。
明るく。
転校生に気を使わせないための優しさ。
一瞬、あいつが憎らしくて僕は吐きそうになる。
ここまで想われてるあいつが、憎くて引き裂いてやりたくなる。
嫉妬。
なんていやな感情…。
僕は屋上へ行った。
放課後、先輩は大抵ここにいる。
僕は静かに佇んでいる先輩の後ろ姿を見つけた。
声…聞きたいよ。
こっち、見てよ…。
唐突な、嵐みたいな感情に僕は流されていた。
気づいたら走ってた。
ぶつかるように激しく、先輩の後ろ姿にしがみついてた。
信じられないけど、僕は…先輩に抱きついていた
「…パイ…先輩、先輩」
みっともないくらい泣いて、広い背中に顔を押し付けて。
学ランじゃないから、温もりが伝わる。
切なくて気が狂う。
先輩は、静かに回された手に手を重ねた。
「…鈴…?」
声がでないから、うんと首を縦に振る。
「どうした?」
振り返りそうになる先輩を止める。
「待って下さい、このままでいて」
先輩は素直に身体の向きを戻した。
「…先輩、僕は…」
言え?
今、言わなきゃ…。
「亮二先輩、好きです」
先輩の身体に緊張が走ったのがわかった。
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