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夜這い (五)

[4698]  美菜子  2009-08-30投稿
(サトル?…悟。…あぁ…あの男!)私はオシゲ婆さんの話しを聞きながら、不謹慎にも男のことを考えていた
「うんうん!美菜さん、よう三年も我慢したなあ!私しゃ、心配で心配で…健司が生きとりゃのう、いい男じゃったが…死んだモンは帰らん!皆で助け合わんとな!島ん者は。うんうん。島は島じゃ、島ん外じゃ誰も何も言やあせん!言うて困るンは自分達じゃけな。うんうん…悟に頼んどく」
私は悶々とした気持ちと長引く話しのイヤさが半々だった。
「はいはい。オシゲさん、その時は宜しくね!」
私はそう言って帰ろうとした。簡易郵便局の奥さんがカウンターの向こうで聞き耳を立てている気もした。
「うんうん。ワシに任しときゃいい!何も心配いらん!男ン衆の言うとおり、な…黙〜って、身を任してな、うんうん。そうかそうか…風呂にでん入って…眠っときゃいいが。うんうん。裏ん鍵、掛けんと、な?」
言ったものの、話しを聞き顔が赤らむのが判った
私はオシゲ婆さんとの話しで、帰宅が遅れ、慌てて夕飯の支度に台所に立った。
義母が、義父に気付かれないように近づいて来た
「港で、オシゲ婆さんに会ったかな?美菜さん」
と小声で囁いた。
「ああ、ええ!会いました。元気だね、オシゲ婆さん…何か、色々、話してました」
私は白ばくれて、答えた
「美菜さん、暦に美菜さんの休みの日に、丸印しを付けといてくれんかな?大きく判りやすくな」
「はいはい!義母さん判りました。休みの日ね?赤丸付けて置きますね」
私はあくまでも白ばくれた。…私は内心、悶々としていた思いが、ドキドキ感に変わっていた。
私が暦に赤丸を付けた翌日の晩には、暦の赤丸の前日に月二回、赤の二重丸が一つ、三角が一つ付けられていた。隔週置きに、それが 12月まで続いていた。
私はそれを知ってはいたが私から質問することはしなかった。
その翌日、オシゲ婆さんに呼び止められた。
「ミナ〜、美菜さん!三角印は悟が行く。丸印は洋平だ!…月二日じゃ
うんうん…当面これで行く…!文句なかろ?未亡人じゃけ、美菜さん、サックだけは、十分準備しとけや!これは自前、自前!町で纏めて買や、安かろ?な?悟は年下じゃし、洋平は三つ上じゃ!飽かせンで、可愛がっちくるるじゃろ。ワシからも、よう話しちょく」
「もう、オシゲさん!」
私は赤い顔をして、怒った振りをして、駆け出すしかなかった。

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