pure 43
ヒカリの体が投げ出された刹那、
吉城がヒカリの残った手を掴んだ。
直ぐに吉城も重力で投げ出されそうになるが、
間一髪、長政もヒカリのもう片方の手を掴んだ。
男二人ならばヒカリを引き戻すのは容易だった。
直ぐにヒカリを抱き上げた。
三人ともその場に倒れ込んだ。
「バカヤロ!!!!ハァ、ハァ、ハァ!!」
「長政が…いなかったら…助けらんなかった…!!」
長政は立ち上がって上がる息で叫んだ。
「ヒカリ!!!俺はお前が好きだ!!だがな!男として勝負には負けたんだ!!!」
「はぁ…!はぁ…、勝負?」
「肉じゃがだよ。俺んちにあった肉じゃが、あれ吉城が作ったんだ。」
「え…?」
「お前を助けるのはいつも吉城が先なんだ。お前は誤解してんだよ。…あの夜だけだ。俺が吉城より上だったのは。……肉じゃがをヒカリが美味いって言ってくれたら、吉城の勝ちだった。」
「私…でも長政が好きなの!」
長政は腰を下ろし、空を見上げた。
学校の周りにパトカーが集まり始めた。
保健室に女子生徒でも来て通報したのだろう。
白昼のサイレンはやけによく響いた。
「吉城、全てに負けた俺なんだが、ヒカリと付き合ってもいいのか?」
吉城は「あああーーー!!!」と空に叫んだ。
そして一言つぶやいた。
「ヒカリが勝ちって言ったんだ。お前の勝ちだ。」
程なくして屋上に警察が来た。
ヒカリは全ての犯行を吉城と校長に命じた事を話した。
「く…詳しい事情は署の方で聴こう。」
女性二人を強姦させた犯人が女性、しかも女子高生だとは信じられないという表情で警官はヒカリを連行した。
「長政、オトナになってまた会お。」
「バカ、面会行ってやるよ。しっかり反省しとけ。」
ヒカリは向き直り、声を殺して泣いた。
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