それでも僕は 12
どんどん月日を重ねて、もう寒い季節。
つかず離れずの僕らの息も白くなって…。
もうすぐ、聖者の誕生日ってイベント。
寮生活者は自宅に帰ってもいいし、寮で過ごしてもいい。
春休みも夏休みも僕は寮で過ごした。
「俺も毎年、帰らないな…ま、邪魔したくないしさ」
叔母に帰ってくるなと、きっと言われてるんだろう…先輩は、わりと嘘つくの苦手だね。
「じゃ、僕ら一緒にクリスマスいられるね」
自分でも予想外に無邪気な言葉が飛び出して、赤面した。
子供じゃあるまいし!
先輩は笑って、「そうだな、ケーキとか買っちゃう?」
なんて軽口。
僕は内心、嬉しすぎて先輩に飛び付きたいくらいだった。
「ね、先輩はどんなケーキ好きなの」
「ん?
そ〜だなあ…チョコよりはスタンダードなマロンとか」
「…スタンダードじゃないと思う」
はしゃいでいたら、先輩が止まった。
視線の先には…
木崎先輩と
リイチ先輩。
…僕の胸がとたんに痛くなる。
先輩は普通の顔して、二人に話しかけた。
「よ、お前ら冬休みどうすんの?」
木崎先輩は屈託ない笑顔で答える。
あの時垣間見えた罪悪感の欠片も今はない。
リイチ先輩が消したのか…うまく隠してるのか。
どちらにしても、木崎先輩は僕より「大人」だ。
「俺らは帰らないよ。
リイチは面倒だっていうし、俺は帰っても親父いねえし」
「なんてね、桜は僕がいるから帰らないんだよ」
さらっと言うリイチ先輩に、僕はギョッとしたんだけど…先輩は笑った。
「馬鹿、ユウキが赤くなってんぞ」
「いつまでも純情だからね、桜は」
「お、俺がいないみたいに話すな!」
三人の輪に入れずに、僕がぼんやり立っていると先輩が、僕の肩を抱いた
「俺たちの邪魔すんなよ…な、鈴」
え?
「それはこっちのセリフだよ」
そういうリイチ先輩の瞳が、物凄く優しい。
木崎先輩も、にっこりする…。
どういうこと?
「じゃあな」
先輩に引っ張られるように屋上に足を運ぶ。
その間、ずっと考えていた。
さっきの雰囲気、なんなんだろう?
屋上の扉を引き開けると一気に冷たい風が吹き抜ける。
着ていたダッフルコートがはためいて、眼鏡を抑えた。
「寒…っ!!せ、先輩これからは屋上ちょっときつくない?」
先輩は笑った。
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