それでも僕は 14
「…ごめんな、気づくの遅すぎだよな。
俺さ…多分、無理やりキスしちまったあの日から…お前のこと好きだったんだと思う。
でもさ…馬鹿だからわかんなかった。
ユウキに対しての気持ちは突然すぎた。
でも、お前への気持ちは…ゆっくり、ゆっくり重なっていたから」
先輩!
馬鹿、なんで声でないんだよ!!
「…辛かったよな、俺…曖昧な態度で。
お前が泣かないように必死に笑顔作る度、抱き締めたかった。
でも、怖くて出来なかった。
何に怖がってたのか…わかんねえや」
心臓の音を聞いているうちに、段々これが「本当のこと」だって実感がわいてくる。
静かに語る先輩の声が僅かに震えてる。
「なあ…鈴はさ…そのままでいいよ…だから、そのまま、俺の傍にいてくれない?」
「…うん…いいよ」
やっと、出た声は、鼻がつまってるうえに掠れていた。
しかも、「いいよ」だなんて…いさせてほしいのは僕の方なのにね。
それなのに、先輩は「本当?本当に?」と何回も聞いて、嬉しそうにぎゅうぎゅう抱き締めてくる
痛いよ、眼鏡つぶれちゃうのに。
でもすっごい嬉しそうに「やった!」とか言いながら押し潰されてると眼鏡の一つや二つ、壊されたって構わないって気がする…。
「鈴、大好きだ」
ストレートに何度も言われた。
真っ赤になって返せない僕に、先輩は何度もキスしてきた。
「鈴がいて、俺がいて、晴天で、幸せ」
…なにそれ(笑)
思わず、二人で爆笑してしまう。
先輩、僕、幸せだよ。
幸せすぎて、もうなんにもいらないよ。
泣き笑いする僕に、先輩がそっと呟いた。
「実はさ…俺、今まで経験ないからさ…」
は?
なんの話?
「だからユウキと話したあと、リイチとも話したんだ…だから、バッチリ…意外と、男同士ってすげーのな」
…。
…ば、馬鹿!!!!
で、先輩が悪戯っぽく笑う。
「俺、打たれ弱いから…鈴、頑張れよ?」
…ってことは僕が…って
何かんがえてんの!
「もう!
先輩の、馬鹿!!!!!!」
晴天で
先輩が笑ってて
僕も笑ってる。
うん。
それが今の全てだ。
それが僕の全てだ。
この先のことなんてわかんないし、わかりたくもないけど…。
今は…。
いま、この時は。
ほんに世は事もなし。
かな。
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