宵待ち 〔1〕
私は奈良に住んでいる。
家業はお茶屋である。
創業は古く、奈良に都があった時代と言われているが定かではない。
もっとも、庭に建っている蔵の中の文献を、骨董屋に見て貰ったことがあるが、今は日本茶を販売しているが、昔はお茶は薬であって、蔵の古文書には「薬師堂、萬や快」などと書かれた物もあり、快を名乗る大陸から渡って来た先祖かも知れない。
びわ茶、柿茶、人参茶、芙蓉茶、芍薬茶…あらゆる薬草の煎じ茶を売っていたらしい。
お茶というより、医者薬屋だったと思う。
大学生の頃、我が家に伝わる古文書を教授に解読して貰ったことがある。
というのも私が先祖が奈良に住み着いた由来が書かれたような古文書を蔵から見つけたからだった
「那良にて、快は薬を成し、仰は窯を成し、端は矛を成し、無は衣を成し恭は粥を成し…快、仰、端、無、恭家は一族なりて先に絶えることなく繁成すなり。絶う瞬あらば宵待ごともて補すべし。……」
平仮名もカタカナも返り点もない単に漢字が羅列されただけの文書だった
半年係って教授はこのように解読してくれた。
教授も意味は判らない。時間をくれ、と言った。
また半年経って教授は、
「私見だが…」と言って自分なりの考えを述べてくれた。
「那良は奈良だ!それだと後はすんなり理解出来る!『奈良で快家は薬を商う。仰家は焼き物、端家は刀剣を、無家は衣類、恭家は食料を商うが快仰端無恭家は一族郎党である。将来に亘って家を絶やすことなく繁栄させよ。血筋が絶える恐れがあれば宵待にて補え』と言う意味だっ思う」
と教授は言った。
そう言われれば私には思い当たることがあった。
物心ついた頃から親戚だと教えられて、盆正月には持ち回りで家族全員で集まる一族がある。
私の苗字は甲斐(快)、仰木の叔父(仰)、端本の伯父(端)、音無の叔母(無)、柿恭の伯父(恭)ではなかろうか…それぞれ苗字に一字がついている。
こんな昔から一族だったのだと感心したものだ。
「先生、有難うございました。私のルーツが判った気がします。ところでこの『宵待』って何ですか?」私は聞いてみた。
教授は意味深に言った。
「よばい!夜這い!知らないだろうな…君!詳しく記されている!」
家業はお茶屋である。
創業は古く、奈良に都があった時代と言われているが定かではない。
もっとも、庭に建っている蔵の中の文献を、骨董屋に見て貰ったことがあるが、今は日本茶を販売しているが、昔はお茶は薬であって、蔵の古文書には「薬師堂、萬や快」などと書かれた物もあり、快を名乗る大陸から渡って来た先祖かも知れない。
びわ茶、柿茶、人参茶、芙蓉茶、芍薬茶…あらゆる薬草の煎じ茶を売っていたらしい。
お茶というより、医者薬屋だったと思う。
大学生の頃、我が家に伝わる古文書を教授に解読して貰ったことがある。
というのも私が先祖が奈良に住み着いた由来が書かれたような古文書を蔵から見つけたからだった
「那良にて、快は薬を成し、仰は窯を成し、端は矛を成し、無は衣を成し恭は粥を成し…快、仰、端、無、恭家は一族なりて先に絶えることなく繁成すなり。絶う瞬あらば宵待ごともて補すべし。……」
平仮名もカタカナも返り点もない単に漢字が羅列されただけの文書だった
半年係って教授はこのように解読してくれた。
教授も意味は判らない。時間をくれ、と言った。
また半年経って教授は、
「私見だが…」と言って自分なりの考えを述べてくれた。
「那良は奈良だ!それだと後はすんなり理解出来る!『奈良で快家は薬を商う。仰家は焼き物、端家は刀剣を、無家は衣類、恭家は食料を商うが快仰端無恭家は一族郎党である。将来に亘って家を絶やすことなく繁栄させよ。血筋が絶える恐れがあれば宵待にて補え』と言う意味だっ思う」
と教授は言った。
そう言われれば私には思い当たることがあった。
物心ついた頃から親戚だと教えられて、盆正月には持ち回りで家族全員で集まる一族がある。
私の苗字は甲斐(快)、仰木の叔父(仰)、端本の伯父(端)、音無の叔母(無)、柿恭の伯父(恭)ではなかろうか…それぞれ苗字に一字がついている。
こんな昔から一族だったのだと感心したものだ。
「先生、有難うございました。私のルーツが判った気がします。ところでこの『宵待』って何ですか?」私は聞いてみた。
教授は意味深に言った。
「よばい!夜這い!知らないだろうな…君!詳しく記されている!」
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