まったくもう 2
良夜が僕を見つけた途端に近寄ってきた。
靴から上履きに履き替えている間中、
「なあ、昨日、ようつべでミクたんの歌聞いてて思ったんだけど…」
とか痛いこと言ってる。
日に長らく当たってないと思われる白い肌、細い首筋…言ってることと同じくらい痛々しい細さ。
「ミクたんとかゆうな」
笑いながら階段を上がっていく。
良夜お気に入りの二次元彼女は、歌もうたえる万能アイドルだ。
…髪が緑色で、変なリボンをつけている。
街で見かけたら、間違いなく僕は避けて通るだろう。
「なあ、今日お前んち行っていいか」
良夜は童顔を輝かせてニッコリしてみせる。
僕は仕方ないなあ、という顔で頷く。
全く…モンハンにはまっている良夜は毎日のように入り浸るのだ。
まあ、僕もゲームは嫌いじゃないからいいけど。
良夜の両親はわりと緩いから全くお泊まりを意に介さない。
良夜と仲良くなってから課題の提出率が異常に下がってしまったのが、マイナスなとこ。
…でも、楽しいのは、プラスなとこかな。
「あ、あのさ…奏太に、相談があってさ」
「なに?」
良夜はしばらく、口を開いては閉じるを繰り返し…結局、首を振った。
「お前んち行ってから話す…」
「?…ま、いいけど」
変なやつ。
…その日1日、良夜は変だった。
クラスの女子やチャラ男たちに言わせると僕らオタクはいつも変らしいけどね。
浮かれたように話続けるかと思うと、急に黙ってみたりする良夜は僕が見てもかなりオカシイ。
どーしちゃったんだか。
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