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遠い日の唄 11

[1969]  にゃんこ  2010-01-08投稿

静かに眼を開けたユウが、一番最初にしたのは微笑むことだった。

理不尽なくらい二人は知らない者同士…それでも、その笑みがあれば時間になんの意味があるだろうと思える。

乱れた服を恥ずかしそうに直すユウを、思わず抱き締めた。

「ユウ…話せよ、何を怖がってる?」

腕のなかで硬くなるユウ…それはそのまま、心の硬さだろう。

話したくないなら聞かなくてもいいかもしれない。
ただ、もしも家の事情で家出してきたのなら…俺はどうしたらユウを守ってやれるだろう?
そんな考えが伝わったのかユウは腕から逃れて、悲しげに微笑んだ。
さっきのしあわせな笑みとは雲泥の差。
笑みとは言えない、影みたいな微笑。

「ごめんなさい」

言えない、という意味のごめんなさい…。

そう取った俺は、浅はかだったんだろうか?

この時、他にできることがあったんだろうか…今の俺ならどうしただろう?

だが、この時の俺はただ、バカみたいに頷くしかなかった。

いいよ、話さなくても。

それしか言えなかった。

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