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遠い日の唄 13

[1840]  にゃんこ  2010-01-17投稿

透き通っている…体を通り抜ける粉雪。

「ちょ…おい、ユウ」

ユウは微笑んだ。
寂しそうでも、なんでもない心から幸せそうに。

唇が開いて文字を作った
…声が聞こえない。









瞬間、ふっと消えてしまった…。

俺の頬に触れた雪みたいに消えてしまった。

嘘だ。

幻…?

いま、ユウがいた場所に手を伸ばした…降りしきる雪は俺を通り抜けることはない…当たり前だ。

嘘だ。

居ないなんて、嘘だ。

振り返った俺は、気づいた…気づいてしまった。

足跡が一つぶん。

俺だけしかない。


ユウ、ユウ…。

子犬みたいな目で、立ってるような気がして…俺はしばらくずっと、ここに居たんだよ。

お前が幻だとは思えなくて俺は…。


どれくらい居たんだろう


俺は何度も振り返って、それでもお前は…。



居なかったね。


まるで始めから居なかったみたいに。




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