遠い日の唄 16
僕は目を覚ました。
目覚めてしまった…。
いつもと同じ真っ白な天井真っ白な壁、真っ白な布団
柔らかい布団でさえ重たく感じる不甲斐ない体。
涙だ。
僕は泣いていた。
暖かい液体が目のはしっこを伝ってきっと枕にシミを作るんだ。
体をひねってそれを見ることさえダルいけど。
僕のいる場所。
…戻って来ちゃったんだなあ…。
「ユウ、泣いてるの?」
心配そうな、双子の姉の声で、僕は笑みらしきものを反射的に浮かべた。
「鮎ちゃん」
掠れた声。
姉の鮎は、心底驚いたように僕を見下ろした。
僕…声出したの…どんくらいぶりかなあ…。
「ユウ!…ま、待って、先生呼んで…」
「行かないで」
うん、今の声はしっかりしてたな。
鮎ちゃんは驚いた時の癖で唇を噛み締めて、じっと見返してきた。
「クレセント…ムーン」
鮎ちゃんの目が丸くなる
「時々聞かせてくれてたよね…ありがと…」
ああ、それだけ言うだけでもしんどい。
体、熱い…いや、寒い?
でも伝えなきゃ…。
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