すきなひと1
「先生、触っても良いですか」
我ながら何て唐突な言い方をしたんだろうと思う。
考えるより勝手に口から出てしまった言葉に「ああ、やってしまった」と思った。
静まり返った2人きりの保健室
目の前のこのひとに向けている言葉なのは明白で
彼女は少しおどけて、何を?なんて投げ返してきた。
ゴツい眼鏡と地味な服装
まるで“形”かのように簡単に後ろでひとつにまとめられた髪型
それが保健室の泉先生
彼女にたいして別に何の興味もなかった
5限目の授業がだるくて保健室にサボりに来たけど
『熱っぽい』と言っただけで普通に信じてあれこれ心配してくるから簡単だなと思って
そのうち何故か氷枕まで作り出して
しかもそれが堅くてなかなか上手くできなかったらしく塞ぐために止めるバネが何回も跳ねて水が飛び散ったりしていて
何やってんだとかちょっと可愛いなとか色々思いながらぼーっとその姿を見てたら
ふいに足に目が止まった。
事務職仕様の少し長めにした紺色のスカート
下から覗く白くて柔らかそうな足
綺麗だと思った。
聞こえなかったフリでもしてくれたら良かったのに…
引き返せないじゃないか。
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