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女・光と影‐3‐

[3270]  マル秘  2010-04-21投稿
門から玄関まで防犯カメラが据えてあり、玄関の格子戸を開けると上がりガマチから板張りが茶室を兼ねた稽古部屋へと続いている。

茶釜からは湯気が上がっていた。
板張りの大部屋の筈であるが今は屏風やついたてで仕切られていた。

「一服、差し上げます…」

真砂は茶釜の前に正座した。
私は手順だけは知識があり少し安堵はしていたが
真砂は黙々と茶を立てる

「私…諦めていました。…お譲り頂くこと。…」

真砂は微笑みながら言う

「結構なお点前でございます。…………この家のことですか…」

私は茶碗をなふさしながら言った。

「そう。…あの日、お顔を拝見して…思い切って…お願いして良かった」

「『先生』とお呼びしましょうか、それとも『奥様』と?」

「主婦です!」

「奥様、あの日私は奥様の気迫と言いますか情念みたいなものを感じました…目を離さず話される奥様の視線に負けました」

「まあ!私の視線ですか!私、そんな目をしてましたか…恥ずかしい限りです。…私も、仕事柄、お顔を拝見すれば判ります…個人的にも、好きなタイプの男性です」

「光栄な言葉です。下賎な表現ですが…心が濡れます。奥様にそのような調教をされたかのように…そうせざるを得ない目力があります。フラメンコのお話をお聞きしましたが…フラメンコを踊る踊り子のあの目線です。あんな目力で見られると男も濡れます……この家も生き返りました。奥様の力で思い通りに造り変えられて…」

「面白い表現されますね……もう一服、立てます。心が濡れるとは抽象的だこと。…女性なら…判る気がしますが………調教と言うのも…刺激的…」

茶筅を使いながら真砂は涼しい顔で言う。
茶碗が私の前に差し出される…

「…心が濡れたら男性はどうなりますか…震えるようなとか…」

「心が震えるというのも抽象的ですね。心じゃなくて体です。興奮してきます。その意味では女性と同じところが濡れて来ます…契約の内容など無関係に、です」

三年後に譲渡するにしても今は大家と店子だ。
私は開き直って言った。

「一気に…具体的ですね。…社長さん、失礼ですがお年は?…私、38 になります…」

「ひとつ違いですね、私は来年 40歳になります。未だに独身ですが…」

「…そうですか。…主人が帰国しましたら、お食事でも…ご招待致します。その節は宜しくお願いします…アメリカナイズしてズケズケものは言いますが」

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