官能小説!(スマートフォン版)

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その他に含まれる記事が1517件見つかりました。

 
  • 夜鷹の床(34)

    「あ、あの……」 紫乃はちょこんと部屋の隅に正座し、板敷きの木目を見詰めている。顔が少々赤いのは、中庭を照らす暮れの陽射しのせい。「私に出来る事があれば何だって致しますから、何なりとお申し付け下さい」「どうした」「こうして置いて頂けるばかりでは申し訳なくて」「ははは、なにも気にする事は無い」 与兵衛は二本差しを抜いて、框にどかりと腰を下ろす。すかさず紫乃は土間から大ダライを引き摺り出し、水瓶から水
    うなぎ [622]
  • 夜鷹の床(33)

    「いいって事よ。その代わりと言っちゃあなんだが、お前んとこの夜鷹にな、掃除をしに来て貰いてえんだ」「お理津にか?」「掃除ぐらいできるだろ。紫乃も居なくなっちまったし、女手が無いと何かと不便でなあ」「……実はな久間。話さなければならん事がある」 与兵衛は膝を正した。いつまでも隠し仰せはしない。そう思っていた。「なんだよ改まって、水臭せぇ」「紫乃なんだが。……実は、うちに転がり込んでいる」「なっ!」 
    うなぎ [594]
  • 夜鷹の床

    「おう、与兵衛じゃねえか。何こんな所で油売ってんだ」 そこには裃を穿き、身なりを調えた久間の姿が。「お前か。それはこちらの台詞だ」「俺は奉行所に所用があったんだよ。それより与兵衛、お前に良い話を持って来たぜ」「まさか縁談じゃなかろうな」「違うわい。ま、歩こう」 大手門へと続く寺町は、打って変わって木魚の音さえも聞こえる静けさ。香の匂いが涼しげな風に運ばれて来る。良い話と言った割に、久間は神妙な面持
    うなぎ [548]
  • 夜鷹の床(32)

     町は晴天。運河沿いの通りを河岸町に差し掛かった辺りで左に折れ、商家の並ぶ町屋へと入る。その中に小ぢんまりと佇む一軒の問屋の前で与兵衛は立ち止まり、狭い入り口の暖簾を潜った。「これはこれは与兵衛様。いつもご苦労様です」「おお若狭屋。実は色々と立て込んでてな、これしか仕上げられなんだわ」「充分でございますよ」 与兵衛は抱えていた傘の束を、店の間から土間に降りてきた旦那に手渡した。黒光りする板の間が静
    うなぎ [522]
  • 夜鷹の床(31)

    「んんんんんっ!」 上半身は紫乃に、下半身は与兵衛に攻め立てられ、狂おしいまでに乱れる。根元まですっかり呑み込まれてしまった与兵衛は上体を起こし、二人をまとめて抱き竦めた。二人ともに小柄なためか、いとも簡単にその腕に納まってしまう。「あぁ……」 お理津は震える唇から幸せそうな声を洩らした。暗闇の中では、もはや誰が誰だか判らないほどの混沌。交じり合う三人。時を忘れ、朝が近づくのにも気付かずに絡み合い
    うなぎ [768]
  • 夜鷹の床(30)

    「これじゃぁ寝れもしないだろう?」 布団を跳ねのけながら起き上がり、お理津が言った。やがて、その舌が与兵衛を濡らし始める。濡れた音が、そして息遣いが重なり合い、蒸し暑くなる部屋。「与兵衛さん……」 切なげな声。下腹部から筋肉をなぞり、お理津の舌がせり上がる。やがてそれは唇を割って彼の舌と絡み合い、吐き出す吐息で与兵衛の肺を満たした。「与兵衛さん……あたしを、抱いておくれよ」「よいのか?」 答えず、
    うなぎ [762]
  • 夜鷹の床(29)

     固まる与兵衛。その唇が強引に塞がれた。自然、彼の腕がお理津の背中へ。然れどその動きは無骨で、且つ不自然。「杯はもう置いて、こっち来て……」 お理津は手を取り、先ほどまで紫乃と抱き合っていた床へと誘う。「一緒に、寝ようよ」 やがて与兵衛は生暖かい布団を足の裏に感じた。横たわれば紫乃とお理津に挟まれる形。なにぶん二人ともに何も着ておらず、故により一層目が冴えてしまう始末。下半身は不覚にも困った事にな
    うなぎ [621]
  • 夜鷹の床(28)

    「私なんかじゃなくって、本当は与兵衛さんにこう言うこと、して貰いたいんだよね……」「や、やめなって……」 顔を紅潮させ、ちらりと与兵衛を覗き見るお理津。燭台の炎に染められているからか定かではないが、恐らくは伏せる彼の顔もまた、赤い。確かにお理津は彼を誘惑したりもするが、いつも半ば冗談めかしており、彼もまた照れているのか、はぐらかしてばかり。不思議な関係であった。お理津は与兵衛を寄り木としながらも、
    うなぎ [603]
  • 夜鷹の床(27)

    「なっ……こ、ここで待ってなって言ったじゃないか」「一人でじっとしてるのが嫌だったから……」 与兵衛は薄暗い畳の上で何も言えず、目のやり場にも窮し、ただ無言の背中を向けているのみ。手元が止まっている所を見るに、聞き耳を立てているようである。「私、怖くって、声も掛けれなくって……。でも、もう子供じゃなくなったから、だから、もう誰にも苦労かけないように……」「まさかあんた自分から」「うん。優しいお爺ち
    うなぎ [644]
  • 夜鷹の床(26)

     河原の道をさ迷う紫乃の姿はまるで幽鬼のようであった。幸いだったのは彼女を最初に見つけたのが、お理津だったという事。「紫乃!……紫乃ちゃん、だよね?」 茫然自失とはこの事だろうか。目の焦点は合っておらず、お理津は一瞬言葉を失った。「さ……探したんだよ! 部屋に行ったら、あんた居なくって。一体どこほっつき歩いてたんだよ!」 肩を揺さぶると、紫乃はやっとお理津の目を見た。「おじいちゃんが、死んじゃった
    うなぎ [565]
 
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