月夜の晩に 13
「好き…?俺を?」
先輩は頷いた。
「ああ。ずっと好きだったよ、俺は俺なりに伝えていたはずだ。
でもお前は…いつも外さないその眼鏡と同じように、壁を作って事実から逃げてたんだろ?」
好き…だった?
だった…。
先輩はため息をついて、頬についた髪を払った。
こちらを見返した先輩の目は、俺を映してはいなかった。俺を通り抜けて遠くを見つめていた。
「わかったよ、風見。
もう、やめよう。付き合ってたわけじゃないから、別れるわけじゃないな。
終わろう、俺たちは…俺たちからは何にも生まれないみたいだ」
抑揚のない声…。
俺は…。
「先輩、俺…」
葉瑠先輩はツイッと横を向いて、小さく呟いた。
「…疲れた。
バイバイ、風見」
バイバイ。
小さな声。
大きく響く、扉の閉まるおと…。
残された俺は、睫毛に残る涙の感触を感じていた。
感じる、という感覚が未だにあることが不思議だ。 だって、心には何も響いていないのに。
望んで手放した関係。
これで…元通り。
そう、何も、問題ない。
先輩は頷いた。
「ああ。ずっと好きだったよ、俺は俺なりに伝えていたはずだ。
でもお前は…いつも外さないその眼鏡と同じように、壁を作って事実から逃げてたんだろ?」
好き…だった?
だった…。
先輩はため息をついて、頬についた髪を払った。
こちらを見返した先輩の目は、俺を映してはいなかった。俺を通り抜けて遠くを見つめていた。
「わかったよ、風見。
もう、やめよう。付き合ってたわけじゃないから、別れるわけじゃないな。
終わろう、俺たちは…俺たちからは何にも生まれないみたいだ」
抑揚のない声…。
俺は…。
「先輩、俺…」
葉瑠先輩はツイッと横を向いて、小さく呟いた。
「…疲れた。
バイバイ、風見」
バイバイ。
小さな声。
大きく響く、扉の閉まるおと…。
残された俺は、睫毛に残る涙の感触を感じていた。
感じる、という感覚が未だにあることが不思議だ。 だって、心には何も響いていないのに。
望んで手放した関係。
これで…元通り。
そう、何も、問題ない。
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