官能小説!(スマートフォン版)

ライアー 2

[1106]  にゃんこ  2010-07-18投稿
「なんだよ、見んなよ」

覚えたての「ギャクタイ」という言葉を嬉しげに語ったやつの声が震えた。

体格では圧倒的に勝るそいつにないオーラがアキヒトにはあった。
その揺れる思念は「殺意」だったと今の僕は確信しているんだけど。

アキヒトが、一歩、近づくと名前も忘れたそいつは後退り…驚くほど素早く教室を飛び出した。

残された僕は…。

この時初めて、アキヒトと対峙したんだ。

つり上がった目の奥底に怒りを滲ませ、僕を見ていた
薄い唇には切れた跡。
体のどの部分に目をやっても治りかけの傷や古い傷痕があって、僕は息が苦しくなった。

「俺の頭がなんだってんだよ…ガキ」

同い年の奴にガキ呼ばわりされたのは後にも先にもこの時だけだ。

僕は唾を飲み込んだ。

ごめん、という言葉を出そうとして出てきた言葉は僕自身を驚かせた。

「一緒に、遊ばない?」

僕らはお互い地面に縫い付けられた影みたいに動かなかった。

いまだに、なんでこの時こんな言葉がでてきたのかわからないんだ。

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